訓読 >>>
我(わ)が宿(やど)の尾花(をばな)が上の白露(しらつゆ)を消(け)たずて玉に貫(ぬ)くものにもが
要旨 >>>
我が家の庭の尾花に付いている白露を、消さずにそのまま玉(真珠)のように緒に貫き通せたらよいのに。
鑑賞 >>>
大伴家持の「白露の歌」。「白露(しらつゆ)」は、漢語「白露」の翻読語。ここは、朝日に輝く露。「宿」は、家の敷地、庭先。「尾花」は、ススキの穂。「消たずて」は、消えてしまわないで、すなわち「そのまま」の意。「もが」は、願望。本来はできるはずのない「露の玉を糸に通す」ことを願望する空想の歌です。
大伴家持の略年譜
718年 家持生まれる(在京)
724年 聖武天皇即位
728年 父の旅人が 大宰帥に
731年 父の旅人が死去(14歳)
738年 内舎人となる(21歳)
橘諸兄との出会い
739年 妾と死別(22歳)
坂上大嬢との出会い
741年 恭仁京の日々(24歳)
744年 安積親王が死去
745年 従五位下に叙せられる(28歳)
746年 越中守となる(29歳)
749年 従五位上に昇叙(32歳)
751年 少納言となる(34歳)
754年 兵部少輔を拝命(37歳)
755年 難波で防人を検校、防人歌を収集(38歳)
756年 聖武太上天皇が崩御
757年 橘諸兄が死去
兵部大輔に昇進(40歳)
橘奈良麻呂の乱
758年 因幡守となる(41歳)
淳仁天皇即位
759年 万葉集巻末の歌を詠む(42歳)
764年 薩摩守となる(48歳)
恵美押勝の乱
766年 称徳天皇が重祚
道鏡が法王となる
767年 大宰少弐となる(50歳)
770年 道鏡が下野国に配流
正五位下に昇叙(53歳)
771年 光仁天皇即位
従四位下に昇叙(54歳)
774年 相模守となる(57歳)
776年 伊勢守となる(59歳)
777年 従四位上に昇叙(60歳)
778年 正四位下に昇叙(61歳)
780年 参議となり、右大弁を兼ねる(63歳)
781年 桓武天皇即位
正四位上に昇叙(64歳)
従三位に叙せられ公卿に列する
783年 中納言となる(66歳)
784年 持節征東将軍となる(67歳)
長岡京遷都
785年 死去(68歳)