訓読 >>>
1932
春雨のやまず降る降る我(あ)が恋ふる人の目すらを相(あひ)見せなくに
1933
我妹子(わぎもこ)に恋ひつつ居(を)れば春雨のそれも知るごとやまず降りつつ
要旨 >>>
〈1932〉春雨が絶え間なく降り続いて、私の恋しい人は、お顔すらも見せてくれない。
〈1933〉あなたを恋しく思い続けていると、春雨が、そんな私の気持を知っているかのように、絶え間なく降り続けている。
鑑賞 >>>
問答歌(問いかけの歌とそれに答える歌によって構成される唱和形式の歌)。1932は女の歌、1933はそれに答えた男の歌。1932の「降る降る」は原文「零々」で、「降り降り」と訓む説もあります。「目すらを」は、顔すらも。「見せなくに」の「に」は、詠嘆。1933の「それも知るごと」は原文「彼毛知如」で、「そも知る如く」と訓むものもあります。「そも」が何を指しているかについて「我妹子」だとして、「そなたも知っているように絶え間なく降り続けている」のように解釈するものもあります。