大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

さ夜中に友呼ぶ千鳥物思ふと・・・巻第4-618

訓読 >>>

さ夜中(よなか)に友呼ぶ千鳥(ちどり)物思(ものも)ふとわびをる時に鳴きつつもとな

 

要旨 >>>

真夜中につれあいを求めて鳴く千鳥よ、物思いに悲しく沈んでいる時にむやみやたらと鳴いたりして。

 

鑑賞 >>>

 大神女郎(おおみわのいらつめ)が大伴家持に贈った歌。大神女郎は伝未詳ですが、『続日本紀』に散見される大神朝臣氏の女子であると見られています。「さ夜中」は、夜中。「友呼ぶ千鳥」は、群れをなして飛ぶ千鳥の鳴く声がお互いに呼び交わすように聞こえるところからの言で、後世には「友千鳥」という言葉も生まれました。ここは呼びかけに近いもの。「わびをる時に」は、悲しく思っている時に。「もとな」は、むやみに、理由なく。文末に「もとな」が来るときは、その上に「つつ」があり、動作主に悪気がなくても話し手には迷惑なことを表す場合に用いられます。

 大神女郎の歌は、巻第8にもあり(1505)、これも家持に贈った歌です。

 

 

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について

『万葉集』掲載歌の索引