大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

泊瀬川白木綿花に落ちたぎつ・・・巻第7-1107~1108

訓読 >>>

1107
泊瀬川(はつせがは)白木綿花(しらゆふはな)に落ちたぎつ瀬を清(さや)けみと見に来しわれを

1108
泊瀬川(はつせがは)流るる水脈(みを)の瀬を早みゐで越す波の音(おと)の清(さや)けく

 

要旨 >>>

〈1107〉泊瀬川は、白い木綿の花が咲いたように白波を立てて流れる瀬が清らかだと、私は見に来ました。

〈1108〉泊瀬川の流れが速く、堰(せき)を越えていく波の音がすがすがしくて。

 

鑑賞 >>>

 「河を詠む」歌。1107の「泊瀬川」は、奈良県桜井市三輪山のそばを流れる初瀬川で、大和川の上流。「初瀬」は、古代大和朝廷の聖地であり、葬送の地でもありました。天武天皇の時代に長谷寺が創建され、今なお信仰の地であり続けています。「白木綿花に」は、白い木綿の花のように。「たぎつ」は、水が激しい勢いで流れる。「瀬を清けみと」の「~を~み」は「~が~ので」と理由を表すミ語法。「見に来しわれを」の「を」は、詠嘆。

 1108の「水脈」は、水の勢いよく流れる川筋。「瀬を早み」はミ語法で、瀬が速いので。「ゐで」は、流れをせき止める設備。堰(せき)。「音の清けく」の「清けく」は、連用形で中止して余情を込めています。キヨケクと訓んでキヨシのク語法として、音が清らかであることだ、と解する説もありますが、キヨシは音について言う例は少ないとされます。

 

 

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