大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

妹が家の門田を見むとうち出で来し・・・巻第8-1596

訓読 >>>

妹(いも)が家の門田(かどた)を見むとうち出(い)で来(こ)し心もしるく照る月夜(つくよ)かも

 

要旨 >>>

愛しい人の家の門前に広がる田を見ようと家を出てきた。その心の甲斐があって、こうこうと照り渡る月だよ。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持の、「娘子が門(かど)に到りて作る歌」。「妹」が誰であるかは不明。「門田」は、家の門に続いているところの田。「見むと」は、見ようと思って。その実は妹に逢おうと思って来たのを、口実としてこのように言ったもの。「うち出で来し」の「うち」は、接頭語。「心もしるく」は、心の甲斐が著しくあって。この歌は、巻第4-700にある「かくしてやなほや退らむ近からぬ道の間をなづみ参来て」の歌と同時の作ではないかとされます。とすると、わざわざやって来たにも関わらず、結局、娘子には逢えなかったようなのです。

 

 

『万葉集』掲載歌の索引

大伴家持の歌(索引)