訓読 >>>
2973
真玉(またま)つくをちこち兼(か)ねて結びつる我(わ)が下紐(したひも)の解くる日あらめや
2974
紫(むらさき)の帯(おび)の結びも解きもみずもとなや妹(いも)に恋ひわたりなむ
2975
高麗錦(こまにしき)紐(ひも)の結びも解き放(さ)けず斎(いは)ひて待てど験(しるし)なきかも
要旨 >>>
〈2973〉今も将来も変わらぬ心でいようと誓って結びあった、私の下紐が解ける日があるだろうか、ありはしない。
〈2974〉紫染めの帯の結び目を解く機会もなく、ただわけもなくあの子に恋い焦がれ続けることになるのか。
〈2975〉高麗錦の紐の結びも解かずに、わが身を慎んでお待ちしているけれども、その甲斐がありません。
鑑賞 >>>
「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」で、紐に寄せての歌。2973の「真玉つく」は玉を付ける緒と続け、「を」の枕詞。「をちこち」は、遠くと近く、将来と現在。「兼ねて」は、わたって。「あらめや」の「や」は、反語。2974の「解きもみず」は、解きもせず。「もとな」は、わけもなく。2975の「高麗錦」は、高麗から渡来した錦で、高級品。この歌からは、結び合った下紐を解かないことが「斎ひて待つ」こと、すなわち男の身の無事を保証し、また自分のもとへ戻るようにさせる呪術だったと知られます。
『万葉集』クイズ
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【解答】
1.雄略天皇 2.大伴家持 3.大伴坂上郎女 4.萩 5.第5巻 6.山上憶良 7.ホトトギス 8.大伴坂上大嬢 9.大伴書持 10.高橋虫麻呂
※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について