大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第8

をみなへし秋萩折れれ・・・巻第8-1534

訓読 >>> をみなへし秋萩(あきはぎ)折れれ玉桙(たまほこ)の道行きづとと乞(こ)はむ子がため 要旨 >>> 女郎花も秋萩も手折っておきなさい。旅のおみやげは?と言ってせがむ愛しい妻のために。 鑑賞 >>> 作者の石川朝臣老夫(いしかわのあそみ…

夕されば小倉の山に鳴く鹿は・・・巻第8-1511

訓読 >>> 夕されば小倉(をぐら)の山に鳴く鹿は今夜(こよひ)は鳴かずい寝(ね)にけらしも 要旨 >>> 夕暮れになるといつも小倉山で鳴く鹿が、今夜は鳴かない。もう夫婦で寝てしまったのだろう。 鑑賞 >>> 「岡本天皇の御製歌」とあり、岡本天皇…

桜井王と聖武天皇の歌・・・巻第8-1614~1615

訓読 >>> 1614九月(ながつき)のその初雁(はつかり)の使(つかひ)にも思ふ心は聞こえ来(こ)ぬかも 1615大(おほ)の浦(うら)のその長浜(ながはま)に寄する波ゆたけく君を思ふこのころ 要旨 >>> 〈1614〉九月にやって来る初雁の使いでなりと…

仏前の唱歌・・・巻第8-1594

訓読 >>> 時雨(しぐれ)の雨(あめ)間(ま)なくな降りそ紅(くれなゐ)ににほへる山の散らまく惜(を)しも 要旨 >>> しぐれ雨よ、そんなに絶え間なく降らないでくれ。紅に色づいた山の紅葉が散ってしまうのが惜しいではないか。 鑑賞 >>> 左注…

橘の花散る里の霍公鳥・・・巻第8-1472~1473

訓読 >>> 1472霍公鳥(ほととぎす)来鳴きとよもす卯(う)の花の共にや来(こ)しと問はましものを1473橘(たちばな)の花散る里の霍公鳥(ほととぎす)片恋(かたこひ)しつつ鳴く日しぞ多き 要旨 >>> 〈1472〉ホトトギスが来て鳴き声を響かせている…

手もすまに植ゑし萩にや・・・巻第8-1633~1635

訓読 >>> 1633手もすまに植ゑし萩(はぎ)にやかへりては見れども飽(あ)かず心 尽(つく)さむ1634衣手(ころもで)に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延(は)へまもれる苦し1635佐保川(さほがは)の水を堰(せ)き上げて植ゑし田…

雁がねの妻呼ぶ声の・・・巻第8-1562~1563

訓読 >>> 1562誰(たれ)聞きつこゆ鳴き渡る雁(かり)がねの妻(つま)呼ぶ声のともしくもあるを 1563聞きつやと妹(いも)が問はせる雁(かり)がねはまことも遠く雲隠(くもがく)るなり 要旨 >>> 〈1562〉どなたかお聞きでしょうか、ここから鳴き…

咲く花もをそろはうとし・・・巻第8-1548

訓読 >>> 咲く花もをそろはうとしおくてなる長き心になほ及(し)かずけり 要旨 >>> 咲く花は色々ですが、せっかちに咲く花はあまり好きになれません。ゆっくり咲く花の、息の長い変わらぬ心には及びません。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女の歌。「をそろ…

呼子鳥いたくな鳴きそ・・・巻第8-1419

訓読 >>> 神奈備(かむなび)の磐瀬(いはせ)の社(もり)の呼子鳥(よぶこどり)いたくな鳴きそ我(あ)が恋まさる 要旨 >>> 神聖な磐瀬の社に鳴く呼子鳥よ、そんなに鳴かないでおくれ。私の恋しい心がつのるばかりだから。 鑑賞 >>> 鏡王女(か…

山も狭に咲ける馬酔木の・・・巻第8-1428

訓読 >>> おしてる 難波(なには)を過ぎて うちなびく 草香(くさか)の山を 夕暮(ゆふぐれ)に 我(わ)が越え来れば 山も狭(せ)に 咲ける馬酔木(あしび)の 悪(あ)しからぬ 君をいつしか 行きてはや見む 要旨 >>> 難波を過ぎて、草香の山を夕…

姫百合の知らえぬ恋は・・・巻第8-1500

訓読 >>> 夏の野の茂みに咲ける姫百合(ひめゆり)の知らえぬ恋は苦しきものぞ 要旨 >>> 夏の野の繁みににひっそりと咲いている姫百合、それが人に気づいてもらえないように、あの人に知ってもらえない恋は苦しいものです。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女…

奈良の山なる黒木もち・・・巻第8-1638

訓読 >>> あをによし奈良(なら)の山なる黒木もち造れる室(むろ)は座(ま)せど飽(あ)かぬかも 要旨 >>> 奈良の山にある黒木で造ったこの室は、いつまで居ても飽きることがない。 鑑賞 >>> 長屋王の邸で酒宴があった時に、聖武天皇が詠んだ儀…

蝦鳴く神奈備川に影見えて・・・巻第8-1435

訓読 >>> 蝦(かはず)鳴く神奈備川(かむなびがは)に影(かげ)見えて今か咲くらむ山吹(やまぶき)の花 要旨 >>> 河鹿(かじか)の鳴く神奈備川に影を映して、今は咲いているだろうか、山吹の花は。 鑑賞 >>> 厚見王(あつみのおおきみ)が、山…

この花のひとよのうちに・・・巻第8-1456~1457

訓読 >>> 1456この花の一(ひと)よのうちに百種(ももくさ)の言(こと)そ隠(こも)れる凡(おほ)ろかにすな 1457この花の一(ひと)よのうちは百種(ももくさ)の言(こと)持ちかねて折(を)らえけらずや 要旨 >>> 〈1456〉この花の一枝には、…

桜の花の散れる頃かも・・・巻第8-1458~1459

訓読 >>> 1458屋戸(やど)にある桜の花は今もかも松風(まつかぜ)疾(いた)み土に散るらむ 1459世の中も常にしあらねば屋戸にある桜の花の散れる頃かも 要旨 >>> 〈1458〉あなたのお庭の桜の花は、今頃、松風がひどく吹くので散っているでしょうね…

浅茅が原のつぼすみれ・・・巻第8-1449

訓読 >>> 茅花(つばな)抜く浅茅(あさぢ)の原のつぼすみれ今盛りなり我(あ)が恋ふらくは 要旨 >>> ツバナを引き抜いて食べられる春がやってきました。その浅茅が原に、つぼすみれが真っ盛りに咲いています。そのように、あなたを恋しく思う気持ち…

石走る垂水の上の・・・巻第8-1418

訓読 >>> 石(いは)ばしる垂水(たるみ)の上のさ蕨(わらび)の萌え出づる春になりにけるかも 要旨 >>> 岩の上を勢いよく流れる滝のほとりに、わらびがやわらかに芽吹いている。ああ、春になったのだな。 鑑賞 >>> 巻第8の巻頭歌であり、志貴皇子…

うち霧らし雪は降りつつ・・・巻第8-1441・1446

訓読 >>> 1441うち霧(き)らし雪は降りつつしかすがに吾家(わぎへ)の園(その)に鶯(うぐひす)鳴くも 1446春の野にあさる雉(きぎし)の妻恋(つまご)ひにおのがあたりを人に知れつつ 要旨 >>> 〈1441〉大空を霞(かす)ませるように雪が降りし…

我が背子と二人見ませば・・・巻8-1658

訓読 >>> 我が背子(せこ)と二人見ませば幾許(いくばく)かこの降る雪の嬉(うれ)しからまし 要旨 >>> この美しく降った雪を、お二人で眺めることができましたら、どんなにか嬉しいことでしたでしょう。 鑑賞 >>> 光明(こうみょう)皇后が、聖…