大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第5

たまきはるうちの限りは平らけく・・・巻第5-

訓読 >>> 897たまきはる うちの限りは 平らけく 安くもあらむを 事もなく 喪なくもあらむを 世間(よのなか)の 憂けく辛けく いとのきて 痛き瘡(きず)には 辛塩(からしほ)を 注(そそ)くちふがごとく ますますも 重き馬荷(うまに)に 表荷(うはに…

若ければ道行き知らじ・・・巻第5-904~906

訓読 >>> 904世の人の 貴び願ふ 七種(ななくさ)の 宝も我は 何(なに)為(せ)むに わが中の 生まれ出(い)でたる 白玉の わが子 古日(ふるひ)は 明星(あかぼし)の 明くる朝(あした)は 敷妙(しきたへ)の 床の辺(へ)去らず 立てれども 居(…

梅花の歌(5)・・・巻第5-834~839

訓読 >>> 834梅の花今盛りなり百鳥(ももとり)の声の恋(こほ)しき春 来(きた)るらし 835春さらば逢はむと思(も)ひし梅の花 今日(けふ)の遊びに相(あひ)見つるかも 836梅の花 手折(たを)りかざして遊べども飽(あ)き足らぬ日は今日(けふ)…

梅花の歌(4)・・・巻第5-828~833

訓読 >>> 828人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かも 829梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや 830万代(よろづよ)に年は来(き)経(ふ)とも梅の花絶ゆることなく咲き渡るべし 831春なれば宜(うべ)も咲きたる梅…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(4)・・・巻第5-861~863

訓読 >>> 861松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)速(はや)み紅(くれなゐ)の裳(も)の裾(すそ)濡れて鮎か釣るらむ 862人(ひと)皆(みな)の見らむ松浦(まつら)の玉島を見ずてや我(わ)れは恋ひつつ居(を)らむ 863松浦川(まつらがは)玉島の浦…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(3)・・・巻第5-858~860

訓読 >>> 858若鮎(わかゆ)釣る松浦(まつら)の川の川なみの並(なみ)にし思はば我(わ)れ恋ひめやも 859春されば吾家(わぎへ)の里の川門(かはと)には鮎子(あゆこ)さ走(ばし)る君待ちがてに 860松浦川(まつらがは)七瀬(ななせ)の淀(よど…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(2)・・・巻第5-855~857

訓読 >>> 855松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)光り鮎(あゆ)釣ると立たせる妹(いも)が裳(も)の裾(すそ)濡(ぬ)れぬ 856松浦(まつら)なる玉島川(たましまがは)に鮎(あゆ)釣ると立たせる子らが家路(いへぢ)知らずも 857遠つ人松浦(まつら…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(1)・・・巻第5-853~854

訓読 >>> 松浦川(まつらがは)に遊ぶ序 余(やつかれ)、暫(たまさか)に松浦の県(あがた)に往(ゆ)きて逍遥(せうえう)し、聊(いささ)かに玉島の潭(ふち)に臨みて遊覧するに、忽(たちま)ちに魚を釣る女子等(をとめら)に値(あ)ひぬ。花の…

梅花の歌(3)・・・巻第5-823~825

訓読 >>> 823梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降りつつ 824梅の花散らまく惜(を)しみわが園(その)の竹の林に鶯(うぐひす)鳴くも 825梅の花咲きたる園(その)の青柳(あをやぎ)を蘰(かづら)にしつつ遊び暮らさな 要旨 >>> 〈8…

言問はぬ木にもありとも我が背子が・・・巻第5-812

訓読 >>> 言(こと)問はぬ木にもありとも我が背子が手馴(たな)れの御琴(みこと)地(つち)に置かめやも 要旨 >>> 言葉を語らない木ではあっても、あなたが弾きなれた御琴を地に置くような粗末などいたしましょうか。 鑑賞 >>> 天平元年(729年…

うるはしき君が手馴れの琴にしあるべし・・・巻第5-810~811

訓読 >>> 810いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝(ひざ)の上(へ)我が枕(まくら)かむ 811言(こと)問はぬ木にはありともうるはしき君が手馴(たな)れの琴(こと)にしあるべし 要旨 >>> 〈810〉何時の日にか、私の音色を分かってくださる方…

龍の馬も今も得てしか・・・巻第5-806~809

訓読 >>> 806龍(たつ)の馬(ま)も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来(こ)むため 807うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜(よる)の夢(いめ)にを継(つ)ぎて見えこそ 808龍(たつ)の馬(ま)を我(あ)れは求めむあをによし奈良の都に来…

山上憶良の「好去好来の歌」・・・巻第5-894~896

訓読 >>> 894神代(かみよ)より 言ひ伝(つ)て来(く)らく そらみつ 大和(やまと)の国は 皇神(すめかみ)の 厳(いつく)しき国 言霊(ことだま)の 幸(さき)はふ国と 語り継(つ)ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知り…

梅の花夢に語らく・・・巻第5-852

訓読 >>> 梅の花(はな)夢(いめ)に語らくみやびたる花と我思(あれも)ふ酒に浮かべこそ 要旨 >>> 梅の花が、夢の中で私に語ったことには、私は自分を風雅な花だと自負してます、どうか私にふさわしく、酒杯に浮かべてください、と。 鑑賞 >>> …

年月は流るるごとし・・・巻第5-804~805

訓読 >>> 804世の中の すべなきものは 年月(としつき)は 流るるごとし とり続(つつ)き 追ひ来るものは 百種(ももくさ)に せめ寄り来(きた)る 娘子(をとめ)らが 娘子さびすと 韓玉(からたま)を 手本(たもと)に巻(ま)かし〈或いはこの句有…

大伴旅人が松浦佐用姫伝説を歌った歌・・・巻第5-871~875

訓読 >>> 871遠つ人 松浦佐用姫(まつらさよひめ)夫恋(つまご)ひに領巾(ひれ)振りしより負(お)へる山の名 872山の名と言ひ継げとかも佐用姫(さよひめ)がこの山の上(へ)に領巾(ひれ)を振りけむ 873万世(よろづよ)に語り継げとしこの岳(た…

天離る鄙に五年住まひつつ・・・巻第5-880~882

訓読 >>> 880天離(あまざか)る鄙(ひな)に五年(いつとせ)住まひつつ都のてぶり忘らえにけり 881かくのみや息づき居(を)らむあらたまの来経行(きへゆ)く年の限り知らずて 882我(あ)が主(ぬし)の御霊(みたま)賜(たま)ひて春さらば奈良の都…

神功皇后と鎮懐石・・・巻第5-813~814

訓読 >>> 813かけまくは あやに畏(かしこ)し 足日女(たらしひめ) 神の命(みこと) 韓国(からくに)を 向(む)け平(たひ)らげて 御心(みこころ)を 鎮(しづ)めたまふと い取らして 斎(いは)ひたまひし 真玉(またま)なす 二つの石を 世の人…

旅人の妻の死を悼んで山上憶良が詠んだ歌・・・巻第5-794~799

訓読 >>> 794大君(おほきみ)の 遠(とほ)の朝廷(みかど)と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして 息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ間に うちなびき 臥(こや)しぬれ 言はむ術(すべ) 為(せ)む術知らに 石木(…

山上憶良の貧窮問答歌・・・巻第5-892~893

訓読 >>> 892風まじり 雨降る夜の 雨まじり 雪降る夜は 術(すべ)もなく 寒くしあれば 堅塩(かたしほ)を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆざけ) うちすすろひて 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらね 髭(ひげ)かき撫でて 我(あれ)を除(お)…

父母を見れば貴し・・・巻第5-800~801

訓読 >>> 800父母(ちちはは)を 見れば貴(たふと)し 妻子(めこ)見れば めぐし愛(うつく)し 世間(よのなか)は かくぞことわり もち鳥の かからはしもよ ゆくへ知らねば 穿沓(うけぐつ)を 脱(ぬ)き(つ)棄るごとく 踏み脱きて 行くちふ人は …

大伴熊凝(おおとものくまごり)の死・・・巻第5-886~891

訓読 >>> 886うち日さす 宮へ上ると たらちしや 母が手離れ 常(つね)知らぬ 国の奥処(おくか)を 百重山(ももへやま) 越えて過ぎ行き 何時(いつ)しかも 京師(みやこ)を見むと 思ひつつ 語らひ居れど 己(おの)が身し 労(いたは)しければ 玉桙…

世の中は空しきものと知る時し・・・巻第5-793

訓読 >>> 世の中は空(むな)しきものと知る時しいよよますます悲しかりけり 要旨 >>> 世の中がむなしく無常だと現実に知り、今までよりもますます悲しい。 鑑賞 >>> 大伴旅人が、筑紫で妻を失くした時の歌。大宰府に着いてまだ日も浅い神亀5年(72…

梅花の歌(2)・・・巻第5-818~822

訓読 >>> 818春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日(はるひ)暮(くら)さむ 819世の中は恋 繁(しげ)しゑやかくしあらば梅の花にもならましものを 820梅の花今盛りなり思ふどち挿頭(かざし)にしてな今盛りなり 821青柳(あをやなぎ)梅との花…

瓜食めば子ども思ほゆ・・・巻第5-802~803

訓読 >>> 802瓜(うり)食(は)めば 子ども思ほゆ 栗(くり)食めば まして偲(しぬ)はゆ 何処(いづく)より 来(きた)りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとな懸りて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ 803銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに勝れ…

梅花の歌(1)・・・巻第5-815

訓読 >>> 正月(むつき)立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しきを経(へ)め 要旨 >>> 正月になり、新春を迎えたら、こうやって梅を見ながら楽しい一日を過ごしましょう。 鑑賞 >>> この歌は、大伴旅人の邸宅での宴で詠まれた「梅の歌」32首…