大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第5

国遠き道の長手をおほほしく・・・巻第5-884~885

訓読 >>> 884国(くに)遠き道の長手(ながて)をおほほしく今日(けふ)や過ぎなむ言(こと)どひもなく 885朝露(あさつゆ)の消(け)やすき我(あ)が身(み)他国(ひとくに)に過ぎかてぬかも親の目を欲(ほ)り 要旨 >>> 〈884〉故郷から遠い旅…

後れ居て長恋せずは御園生の・・・巻第5-864~867

訓読 >>> 864後(おく)れ居(ゐ)て長恋(ながこひ)せずは御園生(みそのふ)の梅の花にもならましものを 865君を待つ松浦(まつら)の浦の娘子(をとめ)らは常世(とこよ)の国の天少女(あまをとめ)かも 866はろはろに思ほゆるかも白雲(しらくも)…

我が盛りいたくくたちぬ・・・巻第5-847~848

訓読 >>> 847我(わ)が盛(さか)りいたくくたちぬ雲(くも)に飛ぶ薬(くすり)食(は)むともまた変若(をち)めやも 848雲(くも)に飛ぶ薬(くすり)食(は)むよは都(みやこ)見ばいやしき我(あ)が身また変若(をち)ぬべし 要旨 >>> 〈847〉…

梅花の歌(7)・・・巻第5-840~846

訓読 >>> 840春柳(はるやなぎ)縵(かづら)に折りし梅の花(はな)誰(たれ)か浮かべし酒杯(さかづき)の上(へ)に 841うぐひすの音(おと)聞くなへに梅の花(はな)我家(わぎへ)の園(その)に咲きて散る見ゆ 842我(わ)がやどの梅の下枝(しづ…

梅花の歌(6)・・・巻第5-816~817

訓読 >>> 816梅の花今咲けるごと散り過ぎず我(わ)が家(へ)の園にありこせぬかも 817梅の花咲きたる園の青柳(あをやぎ)は縵(かづら)にすべくなりにけらずや 要旨 >>> 〈816〉梅の花よ、今咲いているように、散り過ぎることなく我らの庭に咲き続…

天飛ぶや鳥にもがもや・・・巻第5-876~879

訓読 >>> 876天(あま)飛ぶや鳥にもがもや都まで送り申(まを)して飛び帰るもの 877人もねのうらぶれ居(を)るに龍田山(たつたやま)御馬(みま)近づかば忘らしなむか 878言ひつつも後(のち)こそ知らめとのしくも寂(さぶ)しけめやも君いまさずし…

音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が・・・巻第5-883

訓読 >>> 音(おと)に聞き目にはいまだ見ず佐用姫(さよひめ)が領布(ひれ)振りきとふ君(きみ)松浦山(まつらやま) 要旨 >>> 噂には聞いて目にはまだ見たことがない、佐用姫が領布を振ったという、君待つと言う名の松浦山は。 鑑賞 >>> 三島…

松浦がた佐用姫の児が・・・巻第5-868~870

訓読 >>> 868松浦(まつら)がた佐用姫(さよひめ)の児(こ)が領巾(ひれ)振りし山の名のみや聞きつつ居(を)らむ 869足日女(たらしひめ)神の命(みこと)の魚釣(なつ)らすとみ立たしせりし石を誰(た)れ見き 870百日(ももか)しも行(ゆ)かぬ…

たまきはるうちの限りは平らけく・・・巻第5-897~903

訓読 >>> 897たまきはる うちの限りは 平らけく 安くもあらむを 事もなく 喪なくもあらむを 世間(よのなか)の 憂けく辛けく いとのきて 痛き瘡(きず)には 辛塩(からしほ)を 注(そそ)くちふがごとく ますますも 重き馬荷(うまに)に 表荷(うはに…

若ければ道行き知らじ・・・巻第5-904~906

訓読 >>> 904世の人の 貴び願ふ 七種(ななくさ)の 宝も我は 何(なに)為(せ)むに わが中の 生まれ出(い)でたる 白玉の わが子 古日(ふるひ)は 明星(あかぼし)の 明くる朝(あした)は 敷妙(しきたへ)の 床の辺(へ)去らず 立てれども 居(…

梅花の歌(5)・・・巻第5-834~839

訓読 >>> 834梅の花今盛りなり百鳥(ももとり)の声の恋(こほ)しき春(はる)来(きた)るらし 835春さらば逢はむと思(も)ひし梅の花 今日(けふ)の遊びに相(あひ)見つるかも 836梅の花 手折(たを)りかざして遊べども飽(あ)き足らぬ日は今日(…

梅花の歌(4)・・・巻第5-828~833

訓読 >>> 828人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かも 829梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや 830万代(よろづよ)に年は来(き)経(ふ)とも梅の花絶ゆることなく咲き渡るべし 831春なれば宜(うべ)も咲きたる梅…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(4)・・・巻第5-861~863

訓読 >>> 861松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)速(はや)み紅(くれなゐ)の裳(も)の裾(すそ)濡れて鮎か釣るらむ 862人(ひと)皆(みな)の見らむ松浦(まつら)の玉島を見ずてや我(わ)れは恋ひつつ居(を)らむ 863松浦川(まつらがは)玉島の浦…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(3)・・・巻第5-858~860

訓読 >>> 858若鮎(わかゆ)釣る松浦(まつら)の川の川なみの並(なみ)にし思はば我(わ)れ恋ひめやも 859春されば吾家(わぎへ)の里の川門(かはと)には鮎子(あゆこ)さ走(ばし)る君待ちがてに 860松浦川(まつらがは)七瀬(ななせ)の淀(よど…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(2)・・・巻第5-855~857

訓読 >>> 855松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)光り鮎(あゆ)釣ると立たせる妹(いも)が裳(も)の裾(すそ)濡(ぬ)れぬ 856松浦(まつら)なる玉島川(たましまがは)に鮎(あゆ)釣ると立たせる子らが家路(いへぢ)知らずも 857遠つ人松浦(まつら…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(1)・・・巻第5-853~854

訓読 >>> 松浦川(まつらがは)に遊ぶ序 余(やつかれ)、暫(たまさか)に松浦の県(あがた)に往(ゆ)きて逍遥(せうえう)し、聊(いささ)かに玉島の潭(ふち)に臨みて遊覧するに、忽(たちま)ちに魚を釣る女子等(をとめら)に値(あ)ひぬ。花の…

梅花の歌(3)・・・巻第5-823~827

訓読 >>> 823梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降りつつ 824梅の花散らまく惜(を)しみわが園(その)の竹の林に鶯(うぐひす)鳴くも 825梅の花咲きたる園(その)の青柳(あをやぎ)を蘰(かづら)にしつつ遊び暮らさな 826うち靡(なび…

言問はぬ木にもありとも我が背子が・・・巻第5-812

訓読 >>> 言(こと)問はぬ木にもありとも我が背子が手馴(たな)れの御琴(みこと)地(つち)に置かめやも 要旨 >>> 言葉を語らない木ではあっても、あなたが弾きなれた御琴を地に置くような粗末などいたしましょうか。 鑑賞 >>> 天平元年(729年…

うるはしき君が手馴れの琴にしあるべし・・・巻第5-810~811

訓読 >>> 810いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝(ひざ)の上(へ)我が枕(まくら)かむ 811言(こと)問はぬ木にはありともうるはしき君が手馴(たな)れの琴(こと)にしあるべし 要旨 >>> 〈810〉どんな日のどのような時にか、私の音色を分か…

龍の馬も今も得てしか・・・巻第5-806~809

訓読 >>> 806龍(たつ)の馬(ま)も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来(こ)むため 807うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜(よる)の夢(いめ)にを継(つ)ぎて見えこそ 808龍(たつ)の馬(ま)を我(あ)れは求めむあをによし奈良の都に来…

山上憶良の「好去好来の歌」・・・巻第5-894~896

訓読 >>> 894神代(かみよ)より 言ひ伝(つ)て来(く)らく そらみつ 大和(やまと)の国は 皇神(すめかみ)の 厳(いつく)しき国 言霊(ことだま)の 幸(さき)はふ国と 語り継(つ)ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知り…

梅の花夢に語らく・・・巻第5-849~852

訓読 >>> 849残りたる雪にまじれる梅の花早くな散りそ雪は消(け)ぬとも 850雪の色を奪(うば)ひて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも 851我(わ)がやどに盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも 852梅の花(はな)夢(いめ)に語らくみやびた…

年月は流るるごとし・・・巻第5-804~805

訓読 >>> 804世の中の すべなきものは 年月(としつき)は 流るるごとし とり続(つつ)き 追ひ来るものは 百種(ももくさ)に せめ寄り来(きた)る 娘子(をとめ)らが 娘子さびすと 韓玉(からたま)を 手本(たもと)に巻(ま)かし〈或いはこの句有…

大伴旅人が松浦佐用姫伝説を歌った歌・・・巻第5-871~875

訓読 >>> 871遠つ人 松浦佐用姫(まつらさよひめ)夫恋(つまご)ひに領巾(ひれ)振りしより負(お)へる山の名 872山の名と言ひ継げとかも佐用姫(さよひめ)がこの山の上(へ)に領巾(ひれ)を振りけむ 873万世(よろづよ)に語り継げとしこの岳(た…

天離る鄙に五年住まひつつ・・・巻第5-880~882

訓読 >>> 880天離(あまざか)る鄙(ひな)に五年(いつとせ)住まひつつ都のてぶり忘らえにけり 881かくのみや息づき居(を)らむあらたまの来経行(きへゆ)く年の限り知らずて 882我(あ)が主(ぬし)の御霊(みたま)賜(たま)ひて春さらば奈良の都…

神功皇后と鎮懐石・・・巻第5-813~814

訓読 >>> 813かけまくは あやに畏(かしこ)し 足日女(たらしひめ) 神の命(みこと) 韓国(からくに)を 向(む)け平(たひ)らげて 御心(みこころ)を 鎮(しづ)めたまふと い取らして 斎(いは)ひたまひし 真玉(またま)なす 二つの石を 世の人…

旅人の妻の死を悼んで山上憶良が詠んだ歌・・・巻第5-794~799

訓読 >>> 794大君(おほきみ)の 遠(とほ)の朝廷(みかど)と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして 息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ間に うちなびき 臥(こや)しぬれ 言はむ術(すべ) 為(せ)む術知らに 石木(…

山上憶良の貧窮問答歌・・・巻第5-892~893

山上憶良の貧窮問答歌

父母を見れば貴し・・・巻第5-800~801

訓読 >>> 800父母(ちちはは)を 見れば貴(たふと)し 妻子(めこ)見れば めぐし愛(うつく)し 世間(よのなか)は かくぞことわり もち鳥の かからはしもよ ゆくへ知らねば 穿沓(うけぐつ)を 脱(ぬ)き棄(つ)るごとく 踏み脱きて 行くちふ人は …

大伴熊凝(おおとものくまごり)の死・・・巻第5-886~891

訓読 >>> 886うち日さす 宮へ上ると たらちしや 母が手離れ 常(つね)知らぬ 国の奥処(おくか)を 百重山(ももへやま) 越えて過ぎ行き 何時(いつ)しかも 京師(みやこ)を見むと 思ひつつ 語らひ居れど 己(おの)が身し 労(いたは)しければ 玉桙…