大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

山上憶良の歌

有馬皇子を偲ぶ歌・・・巻第2-143~146

訓読 >>> 143磐代(いはしろ)の岸の松が枝(え)結びけむ人は帰りてまた見けむかも 144磐代の野中(のなか)に立てる結び松心も解けずいにしへ思ほゆ 145天(あま)翔(がけ)りあり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ 146後(のち)見むと君が…

山上憶良の「好去好来の歌」・・・巻第5-894~896

訓読 >>> 894神代(かみよ)より 言ひ伝(つ)て来(く)らく そらみつ 大和(やまと)の国は 皇神(すめかみ)の 厳(いつく)しき国 言霊(ことだま)の 幸(さき)はふ国と 語り継(つ)ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知り…

年月は流るるごとし・・・巻第5-804~805

訓読 >>> 804世の中の すべなきものは 年月(としつき)は 流るるごとし とり続(つつ)き 追ひ来るものは 百種(ももくさ)に せめ寄り来(きた)る 娘子(をとめ)らが 娘子さびすと 韓玉(からたま)を 手本(たもと)に巻(ま)かし〈或いはこの句有…

天離る鄙に五年住まひつつ・・・巻第5-880~882

訓読 >>> 880天離(あまざか)る鄙(ひな)に五年(いつとせ)住まひつつ都のてぶり忘らえにけり 881かくのみや息づき居(を)らむあらたまの来経行(きへゆ)く年の限り知らずて 882我(あ)が主(ぬし)の御霊(みたま)賜(たま)ひて春さらば奈良の都…

神功皇后と鎮懐石・・・巻第5-813~814

訓読 >>> 813かけまくは あやに畏(かしこ)し 足日女(たらしひめ) 神の命(みこと) 韓国(からくに)を 向(む)け平(たひ)らげて 御心(みこころ)を 鎮(しづ)めたまふと い取らして 斎(いは)ひたまひし 真玉(またま)なす 二つの石を 世の人…

旅人の妻の死を悼んで山上憶良が詠んだ歌・・・巻第5-794~799

訓読 >>> 794大君(おほきみ)の 遠(とほ)の朝廷(みかど)と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして 息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ間に うちなびき 臥(こや)しぬれ 言はむ術(すべ) 為(せ)む術知らに 石木(…

山上憶良の貧窮問答歌・・・巻第5-892~893

訓読 >>> 892風まじり 雨降る夜の 雨まじり 雪降る夜は 術(すべ)もなく 寒くしあれば 堅塩(かたしほ)を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆざけ) うちすすろひて 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらね 髭(ひげ)かき撫でて 我(あれ)を除(お)…

父母を見れば貴し・・・巻第5-800~801

訓読 >>> 800父母(ちちはは)を 見れば貴(たふと)し 妻子(めこ)見れば めぐし愛(うつく)し 世間(よのなか)は かくぞことわり もち鳥の かからはしもよ ゆくへ知らねば 穿沓(うけぐつ)を 脱(ぬ)き(つ)棄るごとく 踏み脱きて 行くちふ人は …

大伴熊凝(おおとものくまごり)の死・・・巻第5-886~891

訓読 >>> 886うち日さす 宮へ上ると たらちしや 母が手離れ 常(つね)知らぬ 国の奥処(おくか)を 百重山(ももへやま) 越えて過ぎ行き 何時(いつ)しかも 京師(みやこ)を見むと 思ひつつ 語らひ居れど 己(おの)が身し 労(いたは)しければ 玉桙…

今は罷らむ子泣くらむ・・・巻第3-337

訓読 >>> 憶良(おくら)らは今は罷(まか)らむ子泣くらむその彼の母も吾(わ)を待つらむぞ 要旨 >>> 私、憶良はもう失礼いたします。今ごろ家では子供が泣いているでしょう、その母親も私を待っていますから。 鑑賞 >>> この歌は、山上憶良が筑…

梅花の歌(2)・・・巻第5-818~822

訓読 >>> 818春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日(はるひ)暮(くら)さむ 819世の中は恋 繁(しげ)しゑやかくしあらば梅の花にもならましものを 820梅の花今盛りなり思ふどち挿頭(かざし)にしてな今盛りなり 821青柳(あをやなぎ)梅との花…

瓜食めば子ども思ほゆ・・・巻第5-802~803

訓読 >>> 802瓜(うり)食(は)めば 子ども思ほゆ 栗(くり)食めば まして偲(しぬ)はゆ 何処(いづく)より 来(きた)りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとな懸りて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ 803銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに勝れ…

早く日本に帰ろう!・・・巻第1-63

訓読 >>> いざ子どもはやく日本(やまと)へ大伴(おほとも)の御津(みつ)の浜松待ち恋ひぬらむ 要旨 >>> さあ皆の者どもよ、早く日本に帰ろう。大伴の御津の浜のあの松原も、我々を待ち焦がれているだろうから。 鑑賞 >>> 山上憶良が、遣唐使の…