大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第11

朝戸出の君が足結を・・・巻第11-2357

訓読 >>> 朝戸出(あさとで)の君が足結(あゆひ)を濡らす露原(つゆはら) 早く起き出でつつ我(わ)れも裳裾(もすそ)濡らさな 要旨 >>> 朝、戸を出てお帰りになるあなたの足許を濡らす露の原。私も早起きして、あなたに連れ添って出て、裳裾を濡…

朝月の日向黄楊櫛・・・巻第11-2500

訓読 >>> 朝月(あさづき)の日向(ひむか)黄楊櫛(つげくし)古(ふ)りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ 要旨 >>> 朝の月が日に向かうという、日向産の使い古した黄楊櫛(つげぐし)のように、私たちの仲もずいぶん古くなってしまいましたが、どう…

うち日さす宮道を人は・・・巻第11-2382

訓読 >>> うち日さす宮道(みやぢ)を人は満ち行けど我(あ)が思ふ君はただひとりのみ 要旨 >>> 都大路を人が溢れるほどに往来しているけれど、私が思いを寄せるお方はたったお一人っきりです。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「正述心緒(あり…

我れゆ後生まれむ人は・・・巻第11-2375~2376

訓読 >>> 2375我(わ)れゆ後(のち)生まれむ人は我(あ)がごとく恋する道に逢(あ)ひこすなゆめ2376ますらをの現(うつ)し心(ごころ)も我(わ)れはなし夜昼(よるひる)といはず恋ひしわたれば2377何せむに命(いのち)継ぎけむ我妹子(わぎもこ…

うち鼻ひ鼻をぞひつる・・・巻第11-2637

訓読 >>> うち鼻(はな)ひ鼻をぞひつる剣大刀(つるぎたち)身に添ふ妹(いも)し思ひけらしも 要旨 >>> くしゃみが出る、またくしゃみが出る。どうやら、腰に帯びる剣大刀のようにいつも寄り添ってくれている妻が、私のことを思ってくれているらしい…

夕されば君来まさむと・・・巻第11-2588

訓読 >>> 夕(ゆふ)されば君(きみ)来(き)まさむと待ちし夜(よ)のなごりぞ今も寐寝(いね)かてにする 要旨 >>> 夕方になると、あなたがいらっしゃるだろうとお待ちしていた夜の名残なのですね、今もなかなか寝つかれないのは。 鑑賞 >>> 「…

成らむや君と問ひし子らはも・・・巻第11-2489

訓読 >>> 橘(たちばな)の本(もと)に我(わ)を立て下枝(しづえ)取り成(な)らむや君と問ひし子らはも 要旨 >>> 橘の木の下に私を向かい合って立たせて、下枝をつかみ、この橘のように私たちの仲も実るでしょうか、と問いかけたあの子だったのに…

我が玉にせむ知れる時だに・・・巻第11-2446~2447

訓読 >>> 2446白玉(しらたま)を巻(ま)きてぞ持てる今よりは我(わ)が玉にせむ知れる時だに2447白玉(しらたま)を手に巻(ま)きしより忘れじと思ひけらくは何か終(をは)らむ 要旨 >>> 〈2446〉白玉を腕に巻いている今からは、私だけの玉にしよ…

たらちねの母が手放れ斯くばかり・・・巻第11-2368

訓読 >>> たらちねの母が手放れ斯(か)くばかり為方(すべ)なき事(こと)はいまだ為(せ)なくに 要旨 >>> 物心がつき、母の手を離れてから、これほどどうしていいか分からないことは、未だしたことがありません。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』…

相見ては面隠さるるものからに・・・巻第11-2554

訓読 >>> 相(あひ)見ては面(おも)隠さるるものからに継(つ)ぎて見まくの欲(ほ)しき君かも 要旨 >>> 顔を合わせると、恥ずかしくて顔を隠したくなるのですが、それなのに、すぐにまた見たいと思う、あなたなのです。 鑑賞 >>> 結婚後間もな…

我が身は千たび死に返らまし・・・巻第11-2389~2391

訓読 >>> 2389ぬばたまのこの夜(よ)な明けそ赤らひく朝(あさ)行く君を待たば苦しも 2390恋するに死(しに)するものにあらませば我(あ)が身は千(ち)たび死に返(かへ)らまし 2391玉かぎる昨日(きのふ)の夕(ゆふへ)見しものを今日(けふ)の…

君が馬の音ぞする・・・巻第11-2510~2512

訓読 >>> 2510赤駒(あかごま)が足掻(あが)速けば雲居(くもゐ)にも隠(かく)り行かむぞ袖(そで)まけ我妹(わぎも)2511こもりくの豊泊瀬道(とよはつせぢ)は常滑(とこなめ)のかしこき道ぞ汝(な)が心ゆめ2512味酒(うまさけ)の三諸(みもろ…

時守の打ち鳴す鼓数みみれば・・・巻第11-2641

訓読 >>> 時守(ときもり)の打ち鳴す鼓(つづみ)数(よ)みみれば時にはなりぬ逢はなくもあやし 要旨 >>> 時守の打ち鳴らす太鼓の音を数えてみると、もうその時刻になった。なのにあの方が逢いにやってこないのはおかしい。 鑑賞 >>> 「時守」は…

偽も似つきてぞする・・・巻第11-2572

訓読 >>> 偽(いつはり)も似つきてぞする何時(いつ)よりか見ぬ人恋ふに人の死(しに)せし 要旨 >>> 嘘をおっしゃるのもいい加減になさいまし。まだ一度もお逢いしたことなどないのに焦がれ死にするなんて。何時の世の中に、そんな人がいましたか?…

妹が袂をまかぬ夜もありき・・・巻第11-2547

訓読 >>> 斯(か)くばかり恋ひむものぞと念(おも)はねば妹(いも)が袂(たもと)をまかぬ夜(よ)もありき 要旨 >>> こんなに恋しくなるとは思わなかったから、一緒にいても、お前と寝ない夜もあった。 鑑賞 >>> 「妹が袂をまかぬ」は、妻の手…

見わたせば近き渡りをた廻り・・・巻第11-2379

訓読 >>> 見わたせば近き渡りをた廻(もとほ)り今か来(き)ますと恋ひつつぞ居(を)る 要旨 >>> 見渡すと、近い渡り場所なのに、回り道をしながらあなたがいらっしゃるのを、今か今かと待ち焦がれています。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「…

振分の髪を短み・・・巻第11-2540

訓読 >>> 振分(ふりわけ)の髪を短(みじか)み春草(はるくさ)を髪に束(た)くらむ妹(いも)をしぞおもふ 要旨 >>> あの娘は短い振分髪で、まだ結えないので、春草を足して髪に束ねてでもいるだろうか、可愛くてあどけないあの娘のことが恋しくし…

千江の浦廻の木積なす・・・巻第11-2724

訓読 >>> 秋風(あきかぜ)の千江(ちえ)の浦廻(うらみ)の木積(こつみ)なす心は寄りぬ後(のち)は知らねど 要旨 >>> 秋風が吹いて木の屑が千江の浜辺に打ち寄せられるように、私の心はあなたに寄せられました。行く末を知ることはできないけれど…

誰ぞ彼と問はば答へむ・・・巻第11-2545

訓読 >>> 誰(た)そ彼(かれ)と問はば答へむ術(すべ)をなみ君が使(つかひ)を帰しやりつも 要旨 >>> あの人は誰かと問われても、答えようがないので、あなたからの使いをそのまま帰してしまいました。 鑑賞 >>> 男との関係を家人に秘密にして…

吾が念ふ妹は早も死ねやも・・・巻第11-2355

訓読 >>> 愛(うつく)しと吾(わ)が念(も)ふ妹(いも)は早(はや)も死ねやも 生けりとも吾(われ)に依(よ)るべしと人の言はなくに 要旨 >>> 愛しく思うあの女は、いっそのこと早く死ねばいい。生きていても「私に靡くだろう」と誰も言ってく…

紐の片方ぞ床に落ちにける・・・巻第11-2356

訓読 >>> 高麗錦(こまにしき)紐(ひも)の片方(かたへ)ぞ床(とこ)に落ちにける 明日の夜(よ)し来なむと言はば取り置きて待たむ 要旨 >>> 結んだはずの高麗錦の紐の片方が床に落ちていました。明日の夜、また来て下さるなら取って置きますけど…

長谷の五百槻が下に・・・巻第11-2353~2354

訓読 >>> 2353長谷(はつせ)の五百槻(ゆつき)が下(もと)に吾(わ)が隠せる妻 茜(あかね)さし照れる月夜(つくよ)に人見てむかも 2354ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻(つま) 天地(あめつち)に通り照るともあらはれめやも [一云 ますらをの…

新室の壁草刈りに・・・巻第11-2351~2352

訓読 >>> 2351新室(にひむろ)の壁草(かべくさ)刈りにいましたまはね 草のごと寄り合ふ娘子(をとめ)は君がまにまに 2352新室(にひむろ)を踏み鎮(しづ)む子し手玉(ただま)鳴らすも 玉の如(ごと)照りたる君を内へと白(まを)せ 要旨 >>> …

鳴る神の少し響みて・・・巻第11-2513~2514

訓読 >>> 2513鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留(とど)めむ 2514鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留(とど)まらむ妹(いも)し留(とど)めば 要旨 >>> 〈2513〉少しでいいから雷が鳴り、空がかき曇って雨でも…

彼方の埴生の小屋に・・・巻第11-2683

訓読 >>> 彼方(をちかた)の埴生(はにふ)の小屋(をや)に小雨降り床(とこ)さへ濡(ぬ)れぬ身に添へ我妹(わぎも) 要旨 >>> 人里離れたこの粗末な埴生の家に、小雨が降り床まで濡れてしまった。妻よ私に寄り添ってくれ。 鑑賞 >>> 「彼方」…

韓衣 君にうち着せ・・・巻第11-2682

訓読 >>> 韓衣(からころも)君にうち着せ見まく欲(ほ)り恋ひぞ暮らしし雨の降る日を 要旨 >>> 韓衣をあの人に着せてみて、その姿を見たいと、恋い焦がれつつ過ごしました。雨の降るこの日を。 鑑賞 >>> 妻が、自身で縫った韓衣を夫に着せてあげ…

朝影に我が身はなりぬ・・・巻第11-2619

訓読 >>> 朝影(あさかげ)に我が身はなりぬ韓衣(からころも)裾(すそ)のあはずて久しくなれば 要旨 >>> 朝影のように私はやせ細ってしまった。なかなか裾の合わない韓衣のように、あなたに逢わない日々が続いているので。 鑑賞 >>> 恋やつれを…

飛騨人の打つ墨縄のただ一道に・・・巻第11-2648

訓読 >>> かにかくに物は思はじ飛騨人(ひだひと)の打つ墨縄(すみなは)のただ一道(ひとみち)に 要旨 >>> あれこれと物思いはするまい。飛騨人の打つ墨縄がまっすぐに伸びているように、ただ一筋にあなたを思っています。 鑑賞 >>> 「かにかく…

夕占にも占にも告れる今夜だに・・・巻第11-2613

訓読 >>> 夕占(ゆふけ)にも占(うら)にも告(の)れる今夜(こよひ)だに来まさぬ君をいつとか待たむ 要旨 >>> 夕占いにも他の占いにも、いらっしゃるとお告げがあった今夜、こんな今夜さえおいでにならないあなたを、いったいいつと思ってお待ちす…

笑みみ怒りみ紐解く・・・巻第11-2627

訓読 >>> はねかづら今する妹(いも)がうら若み笑(ゑ)みみ怒(いか)りみ付けし紐(ひも)解く 要旨 >>> はねかづらを新しく着けた娘は、初々しく、はにかんだりじれたりしながら、身につけた紐を解いていくよ。 鑑賞 >>> 新婚初夜の儀式のはね…