大伴家持の歌
訓読 >>> なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我(わ)が標(し)めし野の花にあらめやも 要旨 >>> なでしこは咲いて散ったと人は言いますが、私が標をした野のなでしこでしょうか、そんなはずはない。 鑑賞 >>> 大伴家持が、紀女郎に贈った歌。「…
訓読 >>> 1460戯奴(わけ)がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花(ちばな)そ食(を)して肥えませ 1461昼は咲き夜は恋ひ寝(ぬ)る合歓木(ねぶ)の花(はな)君のみ見めや戯奴(わけ)さへに見よ 1462我が君に戯奴(わけ)は恋ふらし賜(たば)りた…
訓読 >>> 777我妹子(わぎもこ)がやどの籬(まがき)を見に行かばけだし門(かど)より帰してむかも 778うつたへに籬(まがき)の姿(すがた)見まく欲(ほ)り行かむと言へや君を見にこ 779板葺(いたぶき)の黒木(くろき)の屋根は山近し明日(あす)…
訓読 >>> 775鶉(うづら)鳴く古(ふ)りにし郷(さと)ゆ思へどもなにそも妹(いも)に逢ふよしもなき 776言出(ことで)しは誰(た)が言(こと)なるか小山田(をやまだ)の苗代水(なわしろみづ)の中淀(なかよど)にして 要旨 >>> 〈775〉古さび…
訓読 >>> ひさかたの雨の降る日をただひとり山辺(やまへ)に居(を)ればいぶせかりけり 要旨 >>> 雨が降る中、あなたのいない山裾でひとり過ごしていると、何とも心が晴れません。 鑑賞 >>> 大伴家持が紀女郎に答えて贈った歌とありますが、紀女…
訓読 >>> 4488み雪降る冬は今日(けふ)のみ鴬(うぐひす)の鳴かむ春へは明日(あす)にしあるらし 4489うち靡(なび)く春を近みかぬばたまの今夜(こよひ)の月夜(つくよ)霞(かす)みたるらむ 4490あらたまの年行き返(がへ)り春立たばまづ我(わ…
訓読 >>> 4331大君(おほきみ)の 遠(とほ)の朝廷(みかど)と しらぬひ 筑紫(つくし)の国は 賊(あた)守る おさへの城(き)ぞと 聞こし食(を)す 四方(よも)の国には 人(ひと)さはに 満ちてはあれど 鶏(とり)が鳴く 東男(あづまをのこ)は…
訓読 >>> 478かけまくも あやに畏(かしこ)し わが大君(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) もののふの 八十伴(やそとも)の男(を)を 召(め)し集(つど)へ 率(あども)ひたまひ 朝狩(あさがり)に 鹿猪(しし)踏み起こし 夕狩り(ゆふがり…
訓読 >>> 475かけまくも あやに畏(かしこ)し 言はまくも ゆゆしきかも 我(わ)が大君(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) 万代(よろづよ)に 見(め)したまはまし 大日本(おほやまと) 久迩(くに)の都は うち靡(なび)く 春さりぬれば 山辺…
訓読 >>> 1562誰(たれ)聞きつこゆ鳴き渡る雁(かり)がねの妻呼ぶ声のともしくもあるを1563聞きつやと妹(いも)が問はせる雁(かり)がねはまことも遠く雲隠(くもがく)るなり 要旨 >>> 〈1562〉どなたかお聞きでしょうか、ここから鳴き渡って行く…
訓読 >>> 3957天離(あまざか)る 鄙(ひな)治(をさ)めにと 大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに 出でて来(こ)し 我(わ)れを送ると あをによし 奈良山(ならやま)過ぎて 泉川(いづみがは) 清き河原(かはら)に 馬 留(とど)め 別れし時…
訓読 >>> 1619玉桙(たまほこ)の道は遠けどはしきやし妹(いも)を相(あひ)見に出でてぞ我(あ)が来(こ)し1620あらたまの月立つまでに来ませねば夢(いめ)にし見つつ思ひそ我(あ)がせし 要旨 >>> 〈1619〉道のりは遠くても、いとおしいあなた…
訓読 >>> 464秋さらば見つつ偲(しの)へと妹(いも)が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも 465うつせみの世は常(つね)なしと知るものを秋風 寒(さむ)み偲(しの)ひつるかも 要旨 >>> 〈464〉秋になったらごらんになって私を思い出してください…
訓読 >>> 462今よりは秋風(あきかぜ)寒く吹きなむを如何(いかに)かひとり長き夜(よ)を寝(ね)む 463長き夜(よ)をひとりや寝(ね)むと君が言へば過ぎにし人の思ほゆらくに 要旨 >>> 〈462〉これから秋風が寒く吹く時節を迎えるのに、どのよう…
訓読 >>> 4285大宮の内(うち)にも外(と)にもめづらしく降れる大雪な踏(ふ)みそね惜(を)し 4286御園生(みそのふ)の竹の林に鴬(うぐひす)はしば鳴きにしを雪は降りつつ 4287鴬(うぐひす)の鳴きし垣内(かきつ)ににほへりし梅この雪にうつろ…
訓読 >>> この雪の消(け)残る時にいざ行かな山橘(やまたちばな)の実(み)の照るも見む 要旨 >>> この雪が消え残っている間にさあ行こう。山橘の実が赤く照り輝いている様を見るために。 鑑賞 >>> 大伴家持の歌です。「山橘」は常緑低木のヤブ…
訓読 >>> 夢(いめ)の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻(か)き探(さぐ)れども手にも触れねば 要旨 >>> 夢の中で逢うのは苦しいものです。あなたに逢えたと思って目を覚まして手探りしても、何にも触れることができないので。 鑑賞 >>> 大伴家持…
訓読 >>> 4302山吹(やまぶき)は撫(な)でつつ生(お)ほさむありつつも君(きみ)来(き)ましつつ挿頭(かざ)したりけり 4303我(わ)が背子(せこ)が宿(やど)の山吹(やまぶき)咲きてあらばやまず通はむいや年の端(は)に 要旨 >>> 〈4302…
訓読 >>> 雪の上(うへ)に照れる月夜(つくよ)に梅の花(はな)折りて送らむはしき子もがも 要旨 >>> 雪の上に輝く月の美しいこんな夜に、梅の花を折って贈ってやれる、いとしい娘でもいたらなあ。 鑑賞 >>> 大伴家持が、宴席で「雪、月、梅の花…
訓読 >>> 4279能登川(のとがは)の後(のち)には逢はむしましくも別るといへば悲しくもあるか 4280立ち別れ君がいまさば磯城島(しきしま)の人は我れじく斎)いは)ひて待たむ 4281白雪(しらゆき)の降り敷く山を越え行かむ君をぞもとな息(いき)の…
訓読 >>> 1633手もすまに植ゑし萩(はぎ)にやかへりては見れども飽(あ)かず心 尽(つく)さむ1634衣手(ころもで)に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延(は)へまもれる苦し1635佐保川(さほがは)の水を堰(せ)き上げて植ゑし田…
訓読 >>> 4180春過ぎて 夏来向へば あしひきの 山呼び響(とよ)め さ夜中(よなか)に 鳴く霍公鳥(ほととぎす) 初声(はつこゑ)を 聞けばなつかし あやめぐさ 花橘(はなたちばな)を 貫(ぬ)き交(まじ)へ かづらくまでに 里(さと)響(とよ)め …
訓読 >>> 4122天皇(すめろき)の 敷きます国の 天(あめ)の下(した) 四方(よも)の道には 馬の爪(つめ) い尽(つく)す極(きは)み 舟舳(ふなのへ)の い泊(は)つるまでに 古(いにしへ)よ 今の現(をつつ)に 万調(よろづつき) 奉(まつ)…
訓読 >>> 1562誰(たれ)聞きつこゆ鳴き渡る雁(かり)がねの妻(つま)呼ぶ声のともしくもあるを 1563聞きつやと妹(いも)が問はせる雁(かり)がねはまことも遠く雲隠(くもがく)るなり 要旨 >>> 〈1562〉どなたかお聞きでしょうか、ここから鳴き…
訓読 >>> 織女(たなばた)し舟乗りすらしまそ鏡(かがみ)清き月夜(つくよ)に雲立ちわたる 要旨 >>> 織り姫は舟に乗って漕ぎ出したよう。美しい鏡のように、清い月夜に雲が立ち渡っていく。 鑑賞 >>> 天平10年(738年)7月7日の夜に、大伴家持が…
訓読 >>> 691ももしきの大宮人(おほみやひと)は多かれど心に乗りて思ほゆる妹(いも) 692うはへなき妹(いも)にもあるかもかくばかり人の心を尽(つく)さく思へば 要旨 >>> 〈691〉大宮に仕える女官はたくさんいるけれども、私の心に乗りかかって…
訓読 >>> 4094葦原(あしはら)の 瑞穂(みづほ)の国を 天下(あまくだ)り 知らしめしける すめろきの 神の命(みこと)の 御代(みよ)重ね 天(あま)の日継(ひつぎ)と 知らし来る 君の御代(みよ)御代 敷きませる 四方(よも)の国には 山川(や…
訓読 >>> 4000天離(あまざか)る 鄙(ひな)に名かかす 越(こし)の中(なか) 国内(くぬち)ことごと 山はしも しじにあれども 川はしも 多(さは)に行けども 統神(すめかみ)の 領(うしは)きいます 新川(にひかは)の その立山(たちやま)に …
訓読 >>> 4199藤波(ふぢなみ)の影(かげ)なす海の底(そこ)清み沈(しづ)く石をも玉とぞ我(わ)が見る 4200多祜の浦の底さへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため 4201いささかに思ひて来(こ)しを多祜の浦に咲ける藤見て一夜(ひとよ)経(へ…
訓読 >>> 783をととしの先つ年より今年まで恋ふれどなぞも妹(いも)に逢ひかたき 784うつつにはさらにもえ言はず夢(いめ)にだに妹(いも)が手本(たもと)を卷き寝(ぬ)とし見ば 785我がやどの草の上白く置く露(つゆ)の身も惜しからず妹(いも)に…