大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

高市黒人の歌

吾妹子に猪名野は見せつ・・・巻第3-279~281

訓読 >>> 279吾妹子(わぎもこ)に猪名野(ゐなの)は見せつ名次山(なすきやま)角(つの)の松原いつか示さむ 280いざ子ども大和へ早く白菅(しらすげ)の真野(まの)の榛原(はりはら)手折(たを)りて行かむ 281白菅(しらすげ)の真野(まの)の榛…

婦負の野のすすき押しなべ・・・巻第17-4016

訓読 >>> 婦負(めひ)の野のすすき押しなべ降る雪に宿(やど)借る今日(けふ)し悲しく思ほゆ 要旨 >>> 婦負の野のススキを一面に倒しながら雪が降っている。ここで宿を取らねばならないのかと思うと、今日はことに悲しく思われる。 鑑賞 >>> 高…

何処にか我が宿りせむ・・・巻第3-274~277

訓読 >>> 274我(わ)が舟は比良(ひら)の港に漕ぎ泊(は)てむ沖へな離(さか)りさ夜(よ)更けにけり 275何処(いづく)にか我(わ)が宿(やど)りせむ高島(たかしま)の勝野(かちの)の原にこの日暮れなば 276妹(いも)も我(あ)れも一つなれか…

四極山うち越え見れば・・・巻第3-272~273

訓読 >>> 272四極山(しはつやま)うち越え見れば笠縫(かさぬひ)の島(しま)漕(こ)ぎ隠(かく)る棚(たな)なし小舟(をぶね) 273磯(いそ)の崎(さき)漕(こ)ぎ廻(た)み行けば近江(あふみ)の海(み)八十(やそ)の港に鶴(たづ)さはに鳴…

大和には鳴きてか来らむ呼子鳥・・・巻第1-70

訓読 >>> 大和には鳴きてか来(く)らむ呼子鳥(よぶこどり)象(きさ)の中山(なかやま)呼びそ越(こ)ゆなる 要旨 >>> 大和には今ごろ呼子鳥が鳴いて来ているのだろうか。象の中山を人を呼びながら鳴き渡っている声が聞こえる。 鑑賞 >>> 高市…

いづくにか船泊てすらむ・・・巻第1-58

訓読 >>> いづくにか船(ふね)泊(はて)すらむ安礼(あれ)の埼(さき)漕(こ)ぎたみ行きし棚(たな)無し小舟(をぶね) 要旨 >>> 今ごろいったい何処で舟どまりしているのだろう、安礼の崎を先ほど漕ぎめぐっていった、船棚のない小さな舟は。 …

桜田へ鶴鳴き渡る年魚市潟・・・巻第3-270~271

訓読 >>> 270旅にしてもの恋(こひ)しきに山下(やまもと)の赤のそほ船(ぶね)沖にこぐ見ゆ 271桜田へ鶴(たづ)鳴き渡る年魚市潟(あゆちがた)潮(しほ)干(ひ)にけらし鶴鳴き渡る 要旨 >>> 〈270〉旅先なので何となくもの恋しい。ふと見ると、…

荒れたる京見れば悲しも・・・巻第1-32~33

訓読 >>> 32古(いにしへ)の人に我(わ)れあれや楽浪(ささなみ)の古き京(みやこ)を見れば悲しき 33楽浪(ささなみ)の国つ御神(みかみ)のうらさびて荒れたる京(みやこ)見れば悲しも 要旨 >>> 〈32〉私は遥かなる古(いにしえ)の人なのだろ…