大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌

東歌(50)・・・巻第14-3361~3362

訓読 >>> 3361足柄(あしがら)の彼面此面(をてもこのも)にさす罠(わな)のかなるましづみ子ろ我(あ)れ紐(ひも)解く 3362相模嶺(さがむね)の小峰(をみね)見退(みそ)くし忘れ来る妹(いも)が名呼びて我(あ)を音(ね)し泣くな 要旨 >>>…

東歌(49)・・・巻第14-3408

訓読 >>> 新田山(にひたやま)嶺(ね)にはつかなな我(わ)に寄そり間(はし)なる子らしあやに愛(かな)しも 要旨 >>> 新田山が他の峰に寄り付かずに一人で立っているように、寝てもいない私との関係を噂されて孤立しているあの子が、本当に愛しく…

東歌(48)・・・巻第14-3460

訓読 >>> 誰(た)れぞこの屋の戸(と)押(お)そぶる新嘗(にふなみ)に我(わ)が背(せ)を遣(や)りて斎(いは)ふこの戸を 要旨 >>> いったい誰なの、この家の戸をがたがた押し揺さぶるのは。新嘗祭を迎えて夫を遠ざけ、家内で身を清めているこ…

東歌(47)・・・巻第14-3432

訓読 >>> 足柄(あしがり)の吾(わ)を可鶏山(かけやま)のかづの木の吾(わ)をかづさねも門(かづ)さかずとも 要旨 >>> 足柄の、私に心を懸けているという可鶏山のように、私をかどわかして下さい、門(かど)を閉ざしていようとも。 鑑賞 >>>…

東歌(46)・・・巻第14-3366

訓読 >>> ま愛(かな)しみさ寝(ね)に我(わ)は行く鎌倉の水無瀬川(みなのせがは)に潮(しほ)満つなむか 要旨 >>> あの子が可愛いので共寝しに行こうと思うが、鎌倉のあの水無瀬川は、今ごろ潮が満ちていることだろうか。 鑑賞 >>> 相模の国…

東歌(45)・・・巻第14-3393

訓読 >>> 筑波嶺(つくはね)のをてもこのもに守部(もりへ)据(す)ゑ母(はは)い守(も)れども魂(たま)ぞ合ひにける 要旨 >>> 筑波嶺のあちらこちらに番人を置いて森を監視するように、母は私を見張っているけれど、私たちの魂は通じ合ってしま…

東歌(44)・・・巻第14-3372

訓読 >>> 相模道(さがむぢ)の余呂伎(よろぎ)の浜の真砂(まなご)なす児(こ)らは愛(かな)しく思はるるかも 要旨 >>> 相模の余呂伎の浜の美しい真砂のように、あの子が愛しく思われてならない。 鑑賞 >>> 相模の国(神奈川県の大部分)の歌…

東歌(43)・・・巻第14-3421~3423

訓読 >>> 3421伊香保嶺(いかほね)に雷(かみ)な鳴りそね我(わ)が上(へ)には故(ゆゑ)はなけども子らによりてぞ 3422伊香保風(いかほかぜ)吹く日吹かぬ日ありと言へど我(あ)が恋のみし時なかりけり 3423上(かみ)つ毛野(けの)伊香保の嶺(…

東歌(42)・・・巻第14-3376

訓読 >>> 恋しけば袖(そで)も振らむを武蔵野(むざしの)のうけらが花の色に出(づ)なゆめ[或る本の歌に曰く いかにして恋ひばか妹に武蔵野のうけらが花の色に出(で)ずにあらむ] 要旨 >>> 恋しければ袖も振るものですが、私たちの恋は人に知られ…

東歌(41)・・・巻第14-3365

訓読 >>> 鎌倉の見越(みごし)の崎の岩(いは)崩(く)えの君が悔(く)ゆべき心は持たじ 要旨 >>> 鎌倉の水越の崎は岩が崩れているけれど、あなたが悔いて仲を崩してしまうような心は、決して持ちません。 要旨 >>> 相模の国(神奈川県)の歌。…

東歌(40)・・・巻第14-3504~3506

訓読 >>> 3504春へ咲く藤(ふぢ)の末葉(うらば)のうら安(やす)にさ寝(ぬ)る夜(よ)ぞなき子ろをし思(も)へば 3505うちひさつ宮の瀬川(せがは)のかほ花(ばな)の恋ひてか寝(ぬ)らむ昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も 3506新室(にひむろ)の…

東歌(39)・・・巻第14-3501~3503

訓読 >>> 3501安波峰(あはを)ろの峰(を)ろ田に生(お)はるたはみづら引かばぬるぬる我(あ)を言(こと)な絶え 3502我(わ)が目妻(めづま)人は放(さ)くれど朝顔(あさがほ)のとしさへこごと我(わ)は離(さか)るがへ 3503安齊可潟(あせか…

東歌(38)・・・巻第14-3500

訓読 >>> 紫草(むらさき)は根をかも終(を)ふる人の子のうら愛(がな)しけを寝(ね)を終(を)へなくに 要旨 >>> 紫草は根を染料に使い果たすという。が、私は、あの子が愛しくてならないのに、共寝を果たすことができない。 鑑賞 >>> 「紫草…

東歌(37)・・・巻第14-3499

訓読 >>> 岡に寄せ我(わ)が刈る萱(かや)のさね萱(かや)のまことなごやは寝(ね)ろとへなかも 要旨 >>> 陸の方に引き寄せながら刈っている萱のように、あの娘は、ほんに素直に私に寝ようと言ってくれない。 鑑賞 >>> 上3句は「なごや」を導く…

東歌(36)・・・巻第14-3465

訓読 >>> 高麗錦(こまにしき)紐(ひも)解き放(さ)けて寝(ぬ)るがへに何(あ)どせろとかもあやに愛(かな)しき 要旨 >>> 華麗な高麗錦の紐を解き放って共寝をしたけれど、この上どうしろというのだ。無性に可愛いくてたまらない。 鑑賞 >>>…

東歌(35)・・・巻第14-3529

訓読 >>> 等夜(とや)の野に兎(をさぎ)狙(ねら)はりをさをさも寝なへ児(こ)ゆゑに母にころはえ 要旨 >>> 等夜(とや)の野に兎を狙っているわけではないが、ろくすっぽ寝てもいないあの子なのに、母親にこっぴどく叱られてしまった。 鑑賞 >>…

東歌(34)・・・巻第14-3544

訓読 >>> 阿須可川(あすかがは)下(した)濁(にご)れるを知らずして背(せ)ななと二人さ寝(ね)て悔しも 要旨 >>> 阿須可川の底が濁っていること、そう、心が濁っているのを知らずに、あんな人と寝てしまって、なんて悔しい。 鑑賞 >>> 女の歌…

東歌(33)・・・巻第14-3491~3493

訓読 >>> 3491柳(やなぎ)こそ伐(き)れば生(は)えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ 3492小山田(をやまだ)の池の堤(つつみ)にさす柳(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも 3493遅速(おそはや)も汝(な)をこそ待ため向(むか)つ…

東歌(32)・・・巻第14-3565

訓読 >>> かの子ろと寝(ね)ずやなりなむはだすすき宇良野(うらの)の山に月(つく)片寄るも 要旨 >>> 今夜はあの子と共寝することなく終わりそうだ。はだすすきの繁る宇良野の山に月が傾いてきた。 鑑賞 >>> 「はだすすき」は穂を出した薄で、…

東歌(31)・・・巻第14-3424~3425

訓読 >>> 3424下(しも)つ毛野(けの)三毳(みかも)の山のこ楢(なら)のす目(ま)ぐはし児(こ)ろは誰(た)が笥(け)か持たむ 3425下(しも)つ毛野(けの)安蘇(あそ)の川原(かはら)よ石踏まず空(そら)ゆと来(き)ぬよ汝(な)が心 告(…

東歌(30)・・・巻第14-3574~3576

訓読 >>> 3574小里(をさと)なる花橘(はなたちばな)を引き攀(よ)ぢて折らむとすれどうら若(わか)みこそ 3575美夜自呂(みやじろ)のすかへに立てるかほが花な咲き出(い)でそね隠(こ)めて偲(しの)はむ 3576苗代(なはしろ)の小水葱(こなぎ…

東歌(29)・・・巻第14-3358~3360

訓読 >>> 3358さ寝(ぬ)らくは玉の緒(を)ばかり恋ふらくは富士の高嶺(たかね)の鳴沢(なるさは)のごと 3359駿河(するが)の海おし辺(へ)に生(お)ふる浜つづら汝(いまし)を頼み母に違(たが)ひぬ [一云 親に違ひぬ] 3360伊豆(いづ)の海に…

東歌(28)・・・巻第14-3353~3354

訓読 >>> 3353麁玉(あらたま)の伎倍(きへ)の林に汝(な)を立てて行きかつましじ寐(い)を先立(さきだ)たね 3354伎倍人(きへひと)の斑衾(まだらぶすま)に綿(わた)さはだ入りなましもの妹(いも)が小床(をどこ)に 要旨 >>> 〈3353〉麁…

東歌(27)・・・巻第14-3459

訓読 >>> 稲つけば皹(かか)る我(あ)が手を今夜(こよひ)もか殿(との)の若子(わくご)が取りて嘆かむ 要旨 >>> 稲をついて赤くひび割れた私の手を、今夜もまたお屋敷の若様がお取りになって、かわいそうにとお嘆きになるのでしょうか。 鑑賞 >…

東歌(26)・・・巻第14-3455

訓読 >>> 恋(こひ)しけば来ませ我が背子(せこ)垣(かき)つ柳(やぎ)末(うれ)摘(つ)み枯らし我(わ)れ立ち待たむ 要旨 >>> 私が恋しいと言うのなら、いらして下さい、あなた。垣根の柳の枝先を枯れてしまうほど摘みながら、立ち続けてお待ち…

東歌(25)・・・巻第14-3413

訓読 >>> 利根川(とねがは)の川瀬も知らず直(ただ)渡り波にあふのす逢へる君かも 要旨 >>> 利根川を渡る浅瀬の場所も分からないままむやみに渡り、だしぬけに波に遭ったように、思いがけずも逢っているあなたであるよ。 鑑賞 >>> 上野(かみつ…

東歌(24)・・・巻第14-3412

訓読 >>> 上(かみ)つ毛野(けの)久路保(くろほ)の嶺(ね)ろの葛葉(くずは)がた愛(かな)しけ子らにいや離(ざか)り来(く)も 要旨 >>> 久路保の嶺の葛葉の蔓(つる)が別れて伸びていくように、愛しい妻といよいよ遠ざかって行くことだ。 …

東歌(23)・・・巻第14-3411

訓読 >>> 多胡(たご)の嶺(ね)に寄(よ)せ綱(づな)延(は)へて寄すれどもあに来(く)やしづしその顔(かほ)よきに 要旨 >>> 多胡の嶺に綱をかけて引き寄せようとしても、ああ悔しい、びくともしない、その顔が美人ゆえに。 鑑賞 >>> 上野…

東歌(22)・・・巻第14-3436~3437

訓読 >>> 3436しらとほふ小新田山(をにひたやま)の守(も)る山のうら枯(が)れせなな常葉(とこは)にもがも 3437陸奥(みちのく)の安達太良(あだたら)真弓(まゆみ)はじき置きて反(せ)らしめきなば弦(つら)はかめかも 要旨 >>> 〈3436〉…

東歌(21)・・・巻第14-3386

訓読 >>> にほ鳥の葛飾(かづしか)早稲(わせ)を饗(にへ)すともその愛(かな)しきを外(と)に立てめやも 要旨 >>> 葛飾の早稲を神に捧げる新嘗祭の夜であっても、愛しいあの人を外に立たせておくことなどできない。 鑑賞 >>> 下総の国の歌。…