大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

『柿本人麻呂歌集』から

見わたせば近き渡りをた廻り・・・巻第11-2379

訓読 >>> 見わたせば近き渡りをた廻(もとほ)り今か来(き)ますと恋ひつつぞ居(を)る 要旨 >>> 見渡すと、近い渡り場所なのに、回り道をしながらあなたがいらっしゃるのを、今か今かと待ち焦がれています。 鑑賞 >>> 「渡り」は、舟の渡し場に…

雪こそば春日消ゆらめ・・・巻第9-1782~1783

訓読 >>> 1782雪こそは春日(はるひ)消(き)ゆらめ心さへ消え失(う)せたれや言(こと)も通(かよ)はぬ 1783松返(まつがへ)りしひてあれやは三栗(みつぐり)の中上(なかのぼ)り来(こ)ぬ麻呂(まろ)といふ奴(やつこ) 要旨 >>> 〈1782〉…

吾が念ふ妹は早も死ねやも・・・巻第11-2355

訓読 >>> 愛(うつく)しと吾(わ)が念(も)ふ妹(いも)は早(はや)も死ねやも 生けりとも吾(われ)に依(よ)るべしと人の言はなくに 要旨 >>> 愛しく思うあの女は、いっそのこと早く死ねばいい。生きていても「私に靡くだろう」と誰も言ってく…

紐の片方ぞ床に落ちにける・・・巻第11-2356

訓読 >>> 高麗錦(こまにしき)紐(ひも)の片方(かたへ)ぞ床(とこ)に落ちにける 明日の夜(よ)し来なむと言はば取り置きて待たむ 要旨 >>> 結んだはずの高麗錦の紐の片方が床に落ちていました。明日の夜、また来て下さるなら取って置きますけど…

長谷の五百槻が下に・・・巻第11-2353~2354

訓読 >>> 2353長谷(はつせ)の五百槻(ゆつき)が下(もと)に吾(わ)が隠せる妻 茜(あかね)さし照れる月夜(つくよ)に人見てむかも 2354ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻(つま) 天地(あめつち)に通り照るともあらはれめやも [一云 ますらをの…

新室の壁草刈りに・・・巻第11-2351~2352

訓読 >>> 2351新室(にひむろ)の壁草(かべくさ)刈りにいましたまはね 草のごと寄り合ふ娘子(をとめ)は君がまにまに 2352新室(にひむろ)を踏み鎮(しづ)む子し手玉(ただま)鳴らすも 玉の如(ごと)照りたる君を内へと白(まを)せ 要旨 >>> …

いにしへにありけむ人も・・・巻第7-1118~1119

訓読 >>> 1118いにしへにありけむ人も吾(わ)が如(ごと)か三輪(みわ)の檜原(ひはら)に挿頭(かざし)折(を)りけむ 1119行く川の過ぎにし人の手折(たを)らねばうらぶれ立てり三輪の桧原(ひはら)は 要旨 >>> 〈1118〉昔の人も今の私と同じ…

星の林に漕ぎ隠る・・・巻第7-1068

訓読 >>> 天(あめ)の海に雲の波立ち月の船(ふね)星の林に漕(こ)ぎ隠(かく)る見ゆ 要旨 >>> 天の海に雲の白波が立ち、その海を月の船が漕ぎ渡り、星の林に隠れていくのが見える。 鑑賞 >>> 巻7の雑歌の冒頭に収められている「天(あめ)を詠…

鳴る神の少し響みて・・・巻第11-2513~2514

訓読 >>> 2513鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留(とど)めむ 2514鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留(とど)まらむ妹(いも)し留(とど)めば 要旨 >>> 〈2513〉少しでいいから雷が鳴り、空がかき曇って雨でも…

夏蔭の妻屋の下に・・・巻第7-1278

訓読 >>> 夏蔭(なつかげ)の妻屋(つまや)の下(した)に衣(きぬ)裁(た)つ我妹(わぎも) うら設(ま)けて我(あ)がため裁(た)たばやや大(おほ)に裁て 要旨 >>> 夏の日をさえぎる木陰の妻屋の下で衣を裁っているわが妻よ。私のために心づ…

誰そかれと我れをな問ひそ・・・巻第10-2240

訓読 >>> 誰(た)そかれと我(わ)れをな問ひそ九月(ながつき)の露(つゆ)に濡れつつ君待つ我(わ)れを 要旨 >>> 誰なのか、などと私にお聞きにならないで下さい。九月の冷たい露に濡れながら、あなたを待っている私なのです。 鑑賞 >>> 女が…

もみち葉の過ぎにし児らと・・・巻第9-1796~1799

訓読 >>> 1796もみち葉の過ぎにし児らと携(たずさ)はり遊びし磯を見れば悲しも 1797潮気(しおけ)立つ荒磯(ありそ)にはあれど行く水の過ぎにし妹(いも)が形見とそ来(こ)し 1798古(いにしえ)に妹と我(わ)が見しぬばたまの黒牛潟(くろうしが…

梯立の倉橋川の・・・巻第7-1283~1284

訓読 >>> 1283梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の石(いし)の橋はも 男盛(をざか)りに我(わ)が渡りてし石の橋はも 1284梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の川の静菅(しづすげ) 我(わ)が刈りて笠にも編(あ)まぬ川の静菅 要旨 …

娘子らが赤裳の裾の濡れて・・・巻第7-1274

訓読 >>> 住吉(すみのえ)の出見(いでみ)の浜の柴な刈りそね 娘子(おとめ)らが赤裳(あかも)の裾(すそ)の濡れて行(ゆ)かむ見む 要旨 >>> 住吉の出見の浜の柴は刈らないでくれ。乙女らが赤い裳裾を濡らしたまま行くのをそっと見たいと思うか…

弓月が嶽に雲立ち渡る・・・巻第7-1087~1088

訓読 >>> 1087穴師川(あなしがは)川波立ちぬ巻向(まきむく)の弓月(ゆつき)が岳に雲居(くもゐ)立てるらし 1088あしひきの山川の瀬の響(なる)なへに弓月(ゆつき)が嶽(たけ)に雲立ち渡る 要旨 >>> 〈1087〉穴師川に川波が立っている。巻向…

小松が末に沫雪流る・・・巻第10-2314

訓読 >>> 巻向(まきむく)の檜原(ひばら)もいまだ雲居ねば小松が末(うれ)ゆ沫雪(あわゆき)流る 要旨 >>> 巻向山の檜林にまだ雲もかかっていないのに、松の梢のあたりから沫雪が流れ飛んでくる。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「冬の雑歌…

千年のように長く・・・巻第11-2387

訓読 >>> 日並(ひなら)べば人知りぬべし今日(けふ)の日は千年(ちとせ)のごともありこせぬかも 要旨 >>> こうして逢う日が度重なれば人目についてしまうでしょう。だから、今日一日が千年のように長くあってほしい。 鑑賞 >>> たびたび逢うわ…