大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

山部赤人の歌

山部赤人が真間の娘子の墓に立ち寄ったときに作った歌・・・巻第3-431~433

訓読 >>> 431古(いにしえ)に ありけむ人の 倭文機(しつはた)の 帯(おび)解(と)き替へて 伏屋(ふせや)立て 妻問(つまど)ひしけむ 葛飾(かつしか)の 真間(まま)の手児名(てごな)が 奥(おく)つ城(き)を こことは聞けど 真木(まき)の…

いにしへの古き堤は年深み・・・巻第3-378

訓読 >>> いにしへの古き堤(つつみ)は年深み池の渚(なぎさ)に水草(みくさ)生(お)ひにけり 要旨 >>> 昔栄えた邸の庭の古い堤は、長い年月を重ね、池のみぎわには水草が生い繁っている。 鑑賞 >>> 題詞に「故(すぎにし)太政大臣藤原家の山…

百済野の萩の古枝に・・・巻第8-1431

訓読 >>> 百済野(くだらの)の萩(はぎ)の古枝(ふるえ)に春待つと居(を)りし鶯(うぐひす)鳴きにけむかも 要旨 >>> 百済野の萩の古枝に春の訪れを待っていたウグイスは、もう鳴き始めているだろうか。 鑑賞 >>> 山部赤人の歌。「百済野」は…

あぢさはふ妹が目離れて・・・巻第6-942~945

訓読 >>> 942あぢさはふ 妹が目(め)離(か)れて しきたへの 枕も巻かず 桜皮(かには)巻き 作れる舟に 真楫(まかぢ)貫(ぬ)き 我(わ)が榜(こ)ぎ来れば 淡路の 野島(のしま)も過ぎ 印南都麻(いなみつま) 辛荷(からに)の島の 島の際(ま)…

みもろの神奈備山に五百枝さし・・・巻第3-324~325

訓読 >>> 324みもろの 神奈備(かむなび)山に 五百枝(いおえ)さし しじに生(お)ひたる 栂(つが)の木の いや継(つ)ぎ継ぎに 玉葛(たまかずら) 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ 明日香(あすか)の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日…

明日よりは下笑ましけむ・・・巻第6-938~941

訓読 >>> 938やすみしし 我が大君(おほきみ)の 神(かむ)ながら 高(たか)知らせる 印南野(いなみの)の 邑美(おふみ)の原の 荒たへの 藤井の浦に 鮪(しび)釣ると 海人船(あまぶね)騒(さわ)き 塩焼くと 人ぞ多(さは)にある 浦を吉(よ)み…

恋しけば形見にせむと・・・巻第8-1471

訓読 >>> 恋しけば形見(かたみ)にせむと我(わ)がやどに植ゑし藤波(ふぢなみ)今咲きにけり 要旨 >>> 恋しくなったら、その人を思い出すよすがにしようと、私の庭に増えた藤の花が、今ようやく咲いた。 鑑賞 >>> 山部赤人の歌。「恋しけば」は…

伊予の高嶺の射狭庭の・・・巻第3-322~323

訓読 >>> 322皇神祖(すめろき)の 神の命(みこと)の 敷きいます 国のことごと 湯はしも 多(さは)にあれども 島山の 宜(よろ)しき国と こごしき 伊予の高嶺(たかね)の 射狭庭(いさには)の 岡に立たして うち思(しの)ひ 辞思(ことしの)ひせ…

若の浦に潮満ち来れば潟を無み・・・巻第6-917~919

訓読 >>> 917やすみしし わご大君(おほきみ)の 常営(とこみや)と 仕へまつれる 雑賀野(さひかの)ゆ 背向(そがひ)に見ゆる 沖つ島 清き渚(なぎさ)に 風吹けば 白波(しらなみ)騒(さわ)き 潮(しほ)干(ふ)れば 玉藻(たまも)刈りつつ 神代…

あしひきの山谷越えて・・・巻第17-3915

訓読 >>> あしひきの山谷(やまたに)越えて野づかさに今は鳴くらむうぐひすの声 要旨 >>> 山や谷を越えてきて、今ごろ野の丘で鳴いているのだろう、ウグイスのあの鳴き声をきいていると。 鑑賞 >>> 題詞に「山部宿祢明人(やまべのすくねあかひと…

わご大君の高知らす吉野の宮は・・・巻第6-923~925

訓読 >>> 923やすみしし わご大君(おほきみ)の 高知らす 吉野の宮は 畳(たたな)づく 青垣(あをかき)隠(ごも)り 川波の 清き河内(かふち)ぞ 春へは 花咲きををり 秋されば 霧(きり)立ち渡る その山の いやますますに この川の 絶ゆることなく …

我が屋戸に韓藍蒔き生ほし・・・巻第3-384

訓読 >>> 我(わ)が屋戸(やど)に韓藍(からあゐ)蒔(ま)き生(お)ほし枯(か)れぬれど懲(こ)りずてまたも蒔かむとぞ思ふ 要旨 >>> わが家の庭に、鶏頭花を種から育てたところ枯れてしまった。けれども懲りずにまた種を蒔こうと思う。 鑑賞 >…

止めば継がるる恋・・・巻第3-372~373

訓読 >>> 372春日(はるひ)を 春日(かすが)の山の 高座(たかくら)の 三笠(みかさ)の山に 朝去らず 雲居(くもゐ)たなびき 容鳥(かほどり)の 間(ま)なくしば鳴く 雲居(くもゐ)なす 心いさよひ その鳥の 片恋(かたこひ)のみに 昼はも 日の…

富士の高嶺に・・・巻第3-317~318

訓読 >>> 317天地(あめつち)の 分れし時ゆ 神(かむ)さびて 高く貴(たふと)き 駿河(するが)なる 布士(ふじ)の高嶺を 天の原 振りさけ見れば 渡る日の 影も隠(かく)らひ 照る月の 光も見えず 白雲(しらくも)も い行きはばかり 時じくぞ 雪は…