大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

佐保風はいたくな吹きそ・・・巻第6-979

訓読 >>>

我が背子が着(け)る衣(きぬ)薄し佐保風(さほかぜ)はいたくな吹きそ家に至るまで

 

要旨 >>>

私のあの人の着ている衣は薄いので、佐保の風はきつく吹かないでください、家にあの人が帰りつくまでは。

 

鑑賞 >>>

 大伴坂上郎女の家を、甥の家持が訪ねてきました。帰り際に、家持にあたえた歌がこの歌です。まるで一夜を共にした恋人を送り出す風情で、「我が背子」は、一般には「わたしの夫」とか「わたしの恋人」ということになりますが、あえてユーモラスに表現したのでしょうか。

 「佐保風」は、佐保に吹く風という意味で、他に明日香風、泊瀬風など、同じような言い方の語があります。佐保は、平城京の北の佐保川上流の一帯で、ここに大伴氏の邸宅がありました。「な~そ」は禁止を表現する語。

 

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