訓読 >>>
2925
みどり子のためこそ乳母(おも)は求むと言へ乳(ち)飲めや君が乳母(おも)求むらむ
2926
悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母(おも)に行かましものを
要旨 >>>
〈2925〉幼い子に乳をあたえるために乳母を求めるといいます。なのに、あなたは乳を飲むような幼児なのでしょうか。そうではないのに、私を乳母として求められるのですか。
〈2926〉残念なことに私はもう老いてしまいました。もっと若ければあなたの求める乳母として参りますのに、それもできません。
鑑賞 >>>
年下の男の求愛を受けた女の歌です。年下といっても、親子ほど年が離れていたらしく、ひょっとして、男は「あなたのおっぱいが飲みたい」とでも言ったのでしょうか。女は「乳母」と言って、はぐらかしながら男の求めを断っていますが、一方では女としての嬉しさが滲み出ているようでもあります。「みどり子」は3歳くらいまでの幼児のこと。『大宝令』の戸令では、3歳以下を「緑」とせよと規定されていました。