大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

池神の力士舞かも・・・巻第16-3831

訓読 >>>

池神(いけがみ)の力士舞(りきしまひ)かも白鷺(しらさぎ)の桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて飛び渡(わた)るらむ

 

要旨 >>>

池の神が演じる力士舞なのだろうか。白鷺が桙を持つように枝をくわえて飛んでいくよ。

 

鑑賞 >>>

 長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)の「白鷺が木をくわえて飛ぶのを詠む」歌。「池神」は、池の神のほか、地名や寺の名とする説もあります。「力士舞」は、日本最初の舞楽である伎楽の一つで、仏教と共に伝わったことから仏教儀式に不可欠なものとされ、奈良時代大仏開眼供養でも上演されました。内容は、美女を追う怪物を金剛力士が討つ様子を演じるもので、力士が怪物のマラ形(男根)を桙で落とし、それを桙に縛りつけて舞います。この歌は、その様子を白鷺が枝をくわえて飛ぶ様に見立てています。

 長忌寸意吉麻呂(生没年未詳)は、渡来人の裔(すえ)であり、柿本人麻呂高市黒人などと同じ時期に宮廷に仕えた下級官吏だったとされます。行幸の際の応詔歌、羇旅歌、また宴席などで会衆の要望にこたえた歌、数種の物の名前を詠み込んだ歌、滑稽な歌など、いずれも短歌の計14首を残しています。