訓読 >>>
池神(いけがみ)の力士舞(りきしまひ)かも白鷺(しらさぎ)の桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて飛び渡(わた)るらむ
要旨 >>>
池の神が演じる力士舞なのだろうか。白鷺が桙を持つように枝をくわえて飛んでいくよ。
鑑賞 >>>
長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)の「白鷺が木をくわえて飛ぶのを詠む」歌。「池神」は、池の神のほか、地名や寺の名とする説もあります。「力士舞」は、日本最初の舞楽である伎楽の一つで、仏教と共に伝わったことから仏教儀式に不可欠なものとされ、奈良時代の大仏開眼供養でも上演されました。内容は、美女を追う怪物を金剛力士が討つ様子を演じるもので、力士が怪物のマラ形(男根)を桙で落とし、それを桙に縛りつけて舞います。この歌は、その様子を白鷺が枝をくわえて飛ぶ様に見立てています。
長忌寸意吉麻呂(生没年未詳)は、渡来人の裔(すえ)であり、柿本人麻呂や高市黒人などと同じ時期に宮廷に仕えた下級官吏だったとされます。行幸の際の応詔歌、羇旅歌、また宴席などで会衆の要望にこたえた歌、数種の物の名前を詠み込んだ歌、滑稽な歌など、いずれも短歌の計14首を残しています。
各巻の主な作者
巻第1
雄略天皇/舒明天皇/中皇命/天智天皇/天武天皇/持統天皇/額田王/柿本人麻呂/高市黒人/長忌寸意吉麻呂/山上憶良/志貴皇子/長皇子/長屋王
巻第2
磐姫皇后/天智天皇/天武天皇/藤原鎌足/鏡王女/久米禅師/石川女郎/大伯皇女/大津皇子/柿本人麻呂/有馬皇子/長忌寸意吉麻呂/山上憶良/倭大后/額田王/高市皇子/持統天皇/穂積皇子/笠金村
巻第3
柿本人麻呂/長忌寸意吉麻呂/高市黒人/大伴旅人/山部赤人/山上憶良/笠金村/湯原王/弓削皇子/大伴坂上郎女/紀皇女/沙弥満誓/笠女郎/大伴駿河麻呂/大伴家持/藤原八束/聖徳太子/大津皇子/手持女王/丹生王/山前王/河辺宮人
巻第4
額田王/鏡王女/柿本人麻呂/吹黄刀自/大伴旅人/大伴坂上郎女/聖武天皇/安貴王/門部王/高田女王/笠女郎/笠金村/湯原王/大伴家持/大伴坂上大嬢
巻第6
笠金村/山部赤人/車持千年/高橋虫麻呂/山上憶良/大伴旅人/大伴坂上郎女/湯原王/市原王/大伴家持/田辺福麻呂
巻第7
作者未詳/柿本人麻呂歌集
巻第8
舒明天皇/志貴皇子/鏡王女/穂積皇子/山部赤人/湯原王/市原王/弓削皇子/笠金村/笠女郎/大原今城/大伴坂上郎女/大伴家持
巻第9
柿本人麻呂歌集/高橋虫麻呂/田辺福麻呂/笠金村/播磨娘子/遣唐使の母
巻第10~13
作者未詳/柿本人麻呂歌集
巻第14
作者未詳
巻第16
穂積親王/境部王/長忌寸意吉麻呂/大伴家持/陸奥国前采女/乞食者
巻第17
橘諸兄/大伴家持/大伴坂上郎女/大伴池主/大伴書持/平群女郎
巻第18
橘諸兄/大伴家持/大伴池主/田辺福麻呂/久米広縄/大伴坂上郎女
巻第19
大伴家持/大伴坂上郎女/久米広縄/蒲生娘子/孝謙天皇/藤原清河
巻第20
大伴家持/大原今城/防人等