大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(5)・・・巻第20-4344

訓読 >>>

忘らむて野行き山行き我(わ)れ来れど我(わ)が父母(ちちはは)は忘れせぬかも

 

要旨 >>>

忘れよう、忘れようと思って、野を行き山を行きやってきたが、わが父母のことは忘れることなどできない。

 

鑑賞 >>>

 この歌の作者は、駿河国出身の商長首麻呂(あきのおさのおびとまろ)であること以外は分かっていません。故郷を出立し、引率されて難波に向かう途中の野や山を見つつ詠んだ歌です。徒歩でようやく難波に着いた彼らは、そこから海路で筑紫に向かいました。この歌は、先の太平洋戦争の時、若い出征兵士らの共感を呼び、特に愛唱されたといいます。

 

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