大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(43)・・・巻第14-3421~3423

訓読 >>>

3421
伊香保嶺(いかほね)に雷(かみ)な鳴りそね我(わ)が上(へ)には故(ゆゑ)はなけども子らによりてぞ

3422
伊香保風(いかほかぜ)吹く日吹かぬ日ありと言へど我(あ)が恋のみし時なかりけり

3423
上(かみ)つ毛野(けの)伊香保の嶺(ね)ろに降ろ雪(よき)の行き過ぎかてぬ妹(いも)が家のあたり

 

要旨 >>>

〈3421〉伊香保の嶺に雷が鳴らないでくれ。私には差し支えないが、あの子のために。

〈3422〉伊香保の風は吹く日も吹かぬ日もあるというが、私の恋心はやむときがない。

〈3423〉伊香保のあの嶺に降る雪ではないが、とても行き過ぎ難い、あの子の家のあたりは。

 

鑑賞 >>>

 上野(かみつけの)の国の歌。3421の「伊香保嶺」は、群馬県榛名山。「な鳴りそね」の「な~そね」は禁止の願望。「故はなけども」は、支障はないが。群馬県の山間部は雷の名所として知られており、国文学者の折口信夫は、「雷鳴を遠ざける呪文の様に用ゐられたものだらう」という解釈をしています。3422の「時なかりけり」は、絶え間がない。3423の上3句は「行き」を導く序詞。「降ろ雪」の「ふろ」「よき」は東語。同じく上州名物の空っ風と雪がこの2首で歌われています。

 

東海道東山道旧国名比較

東海道
伊賀(三重)/伊勢(三重)/志摩(三重)/尾張(愛知)/三河(愛知)/遠江(静岡)/駿河(静岡)/伊豆(静岡・東京)/甲斐(山梨)/相模(神奈川)/武蔵(埼玉・東京・神奈川)/安房(千葉)/上総(千葉)/下総(千葉・茨城・埼玉・東京)/常陸(茨城)

東山道
近江(滋賀)/美濃(岐阜)/飛騨(岐阜)/信濃(長野)/上野(群馬)/下野(栃木)/岩代(福島)/磐城(福島・宮城)/陸前(宮城・岩手)/陸中(岩手)/羽前(山形)/羽後(秋田・山形)/陸奥(青森・秋田・岩手)