大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

夜ぐたちに寝覚めて居れば・・・巻第19-4146~4147

訓読 >>>

4146
夜(よ)ぐたちに寝覚めて居(を)れば川瀬(かはせ)尋(と)め心もしのに鳴く千鳥かも

4147
夜(よ)くたちて鳴く川千鳥(かはちどり)うべしこそ昔の人も偲(しの)ひ来(き)にけれ

 

要旨 >>>

〈4146〉夜が更けてもなかなか眠れずにいると、川瀬を伝って、我が心も哀しくなるほどに鳴く千鳥よ。

〈4147〉夜が更けて鳴く川千鳥、なるほどもっともだ、昔の人もこの切ない声に心惹かれてきたのは。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持の、夜中に千鳥が鳴くのを聞いた歌。4146の「夜ぐたち」の「くたち」は盛りが過ぎて衰える意で、ここでは夜中過ぎ。「川瀬」の「川」は、国庁の近くを流れる射水川。「尋め」は、川の瀬に伝って。「心もしのに」の「しのに」は、しおれてしまうばかりに、の意。「しのに」は『万葉集』中10例見られますが、そのうち9例が「心もしのに」の形であり、定型表現だったことが知られます。4147の「うべしこそ」は、なるほどもっともだ。「けれ」は「こそ」の係り結び。

 

 

 

係り結び

 文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」など、特定の係助詞が上にあるとき、文末の語が終止形以外の活用形になる約束ごと。係り結びは、内容を強調したり疑問や反語をあらわしたりするときに用いられます。

①「ぞ」「なむ」・・・強調の係助詞
 ⇒ 文末は連体形
   例:~となむいひける

②「や」「か」・・・疑問・反語の係助詞
 ⇒ 文末は連体形
   例:~やある

③「こそ」・・・強調の係助詞
 ⇒ 文末は已然形
   例:~とこそ聞こえけれ

各巻の概要

大伴家持の歌(索引)