大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

梯立の倉橋川の・・・巻第7-1283~1284

訓読 >>>

1283
梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の石(いし)の橋はも 男盛(をざか)りに我(わ)が渡りてし石の橋はも

1284
梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の川の静菅(しづすげ) 我(わ)が刈りて笠にも編(あ)まぬ川の静菅

 

要旨 >>>

〈1283〉倉橋川の石の橋はどうなったろう、私が若い頃に、あの子の家に通うために渡ったあの石の橋はどうなっただろう。

〈1284〉倉橋川の川のほとりに生えている静菅よ、私が刈って笠も編まずにそのままにした川の静菅よ。

 

鑑賞 >>>

 いずれも若かったころを偲ぶ歌で、『柿本人麻呂歌集』に収められています。「梯立の」は「倉」の枕詞。「倉橋川」は桜井市多武峰から倉橋を経て初瀬川に合流する川。1283の「石の橋」は川の浅い場所に石を並べて橋にした踏み石。1284の「静菅」は菅の一種ながら、どういう特色のあるものかは不明。以前、この土地の女で、妻にしようと思いながらそのままにしてしまったことを譬えて思い出しています。