大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(33)・・・巻第14-3491~3493

訓読 >>>

3491
柳(やなぎ)こそ伐(き)れば生(は)えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ

3492
小山田(をやまだ)の池の堤(つつみ)にさす柳(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも

3493
遅速(おそはや)も汝(な)をこそ待ため向(むか)つ峰(を)の椎(しひ)の小枝(こやで)の逢ひは違(たが)はじ

 

要旨 >>>

〈3491〉柳は伐れば代わりが生えてもこよう。が、生身のこの世の人が恋い焦がれて死にそうなのに、どうしろというのか。

〈3492〉山あいの田の池の堤に挿し木した柳は、根づくのもあればつかないものもある。そのように、私の恋が成就しようがしまいが問題ではない。お前との仲はいつまでも変わらない。

〈3493〉遅かろうと早かろうとあなたを待ちましょう。向かいの峰の椎の小枝が重なり合っているように、逢えるのは間違いないだろうから。

 

鑑賞 >>>

 3492の「小山田」の「小」は、美称。上3句は「成りも成らずも」を導く序詞。「さす柳」の「さす」は、挿し木をする。3493の「向つ峰の椎の小枝の」は「逢ひ」を導く序詞。「小枝(こやで)」は「こえだ」の東語。