大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

君に恋ひ萎えうらぶれ・・・巻第10-2298

訓読 >>>

君に恋ひ萎(しな)えうらぶれ我(あ)が居(を)れば秋風吹きて月かたぶきぬ

 

要旨 >>>

あなたに恋い焦がれ、打ちしおれてしょんぼりしている間に、秋風が吹き、いつの間にか月が西空に傾いてしまいました。

 

鑑賞 >>>

 「月に寄せる」歌。「萎えうらぶれ」の「萎え」は萎(しお)れ、「うらぶれ」は物思いにしおれる意で、同じような意味の語を重ねたもの。男の通いは、月が出ている夜でなければならず、しかも夜が更けてからの通いは禁忌とされました。ここでは「月かたぶきぬ」とあるので、もはや男の訪れは期待できない状況を言っています。