訓読 >>>
君に恋ひ萎(しな)えうらぶれ我(あ)が居(を)れば秋風吹きて月かたぶきぬ
要旨 >>>
あなたに恋い焦がれ、打ちしおれてしょんぼりしている間に、秋風が吹き、いつの間にか月が西空に傾いてしまいました。
鑑賞 >>>
「月に寄せる」歌。「萎えうらぶれ」の「萎え」は萎(しお)れ、「うらぶれ」は物思いにしおれる意で、同じような意味の語を重ねたもの。男の通いは、月が出ている夜でなければならず、しかも夜が更けてからの通いは禁忌とされました。ここでは「月かたぶきぬ」とあるので、もはや男の訪れは期待できない状況を言っています。