大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

燈の影に輝ふ・・・巻第11-2642

訓読 >>>

燈(ともしび)の影に輝(かがよ)ふうつせみの妹(いも)が笑(ゑ)まひし面影(おもかげ)に見ゆ

 

要旨 >>>

燈火の光りにきらめいていたあの娘の笑顔が、今も面影に現れて見えることだ。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」。「影」は光。「かがよふ」はきらめく。当時、燈火は貴重なものでしたから、ある程度の身分があった人の歌とみられます。「うつせみの」は現し身ので、「妹」の感を強めるために添えているもの。「笑まひし」の「し」は強意。「面影」は、目に浮かぶ人の姿。見ようと思って見るものではなく、向こうから勝手にやってきて仕方がないもの。通って行った夜の印象を歌っているとする見方もありますが、まだ自分が手に入れていない女性のことのようでもあります。宴席などで、薄い隔てのものなどの向こう側にいて燈火の光に揺れる女性の姿を言っているのでしょうか。