大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(8)・・・巻第14-3388

訓読 >>>

筑波嶺(つくはね)の嶺(ね)ろに霞(かすみ)居(ゐ)過ぎかてに息づく君を率寝(ゐね)て遣(や)らさね

 

要旨 >>>

筑波嶺の嶺にかかった霞が動かないように門前を立ち去れず、ため息をついているあの人を、引っ張ってきて共寝してやりなさいよ。

 

鑑賞 >>>

 常陸の国の歌。どうやら女同士の会話の歌のようです。門前でうろうろしている男を見て、引っ張ってきて共寝してやりなさい、つまり、ヤラせてあげなさいよと、実にあっけらかんとしたエロい歌です。男はなぜ門前を通り過ぎずにうろうろしていたのでしょうか。霞で視界が悪くて山道を登れなかったのか、それとも、好きな女の家の前にやって来たものの、どうしてよいやら迷っていたのか・・・。

 上2句は「過ぎかてに」を導く序詞。「筑波嶺」は筑波山。なかなか露骨な表現ですが、不思議と嫌味は感じられません。

 

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