大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

誰れか織りけむ経緯なしに・・・巻第7-1120

訓読 >>>

み吉野の青根(あをね)が峰(みね)の蘿席(こけむしろ)誰(た)れか織(お)りけむ経緯(たてぬき)なしに

 

要旨 >>>

吉野の青根が岳の美しい蘿(こけ)のむしろは、いったい誰が織り上げたのだろう、縦糸と横糸もなしに。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「蘿(こけ)を詠む」歌。「青根が峰」は吉野町宮滝の三船山南方にある山。密生する蘿を筵(むしろ)に喩え、その美しさを讃えています。「経緯」は機織りの縦糸と横糸。飛鳥時代以来、吉野山には仙女が住んでいると信じられており、この歌は、機織りをする仙女の存在を背景に詠んだものと見られます。また、大津皇子の歌に「経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね」(巻第8-1512)があり、その影響を受けているともいわれます。