大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我が背子が捧げて持てるほほがしは・・・巻第19-4204~4205

訓読 >>>

4204
我が背子(せこ)が捧(ささ)げて持てるほほがしはあたかも似るか青き蓋(きぬがさ)

4205
皇祖(すめろき)の遠御代御代(とほみよみよ)はい布(し)き折り酒(き)飲みきといふぞこのほほがしは

 

要旨 >>>

〈4204〉あなた様が捧げ持っていらっしゃるホオノキは、まるで貴人にかざす青い蓋(きぬがさ)のようですね。

〈4205〉遠い昔の天皇の御代御代には、葉を折り重ねて酒を飲んだということですよ、このホオガシワは。

 

鑑賞 >>>

 題詞には「攀(よ)ぢ折れる保宝葉(ほほがしは)を見る歌二首」とあり、4204は講師(国分寺の主僧)の恵行(えぎょう:伝未詳)が家持に贈った歌、4205は家持が答えた歌です。4204の「我が背子」は家持のこと。「ほほがしは」は朴木(ほおのき)で、広葉の集まった形が蓋に似ています。「あたかも」は、まるで、ちょうど。「蓋」は貴人にさしかける織物の笠。4205の「皇祖」は天皇。「遠御代御代」は遠い御代御代。「い布き折り」の「い」は接頭語。「布き」は重ねる意。「折り」は折り曲げる。葉を重ねて杯にしたことを言っています。

 恵行が軽い気持ちで言っているようなのに、家持は相手が相手だったためか、固く改まった言い方をしています。また、家持の実直さと、古代を尊ぶ心の深さが窺える歌です。