大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

敷島の大和の国に人二人・・・巻第13-3248~3249

訓読 >>>

3248
敷島(しきしま)の 大和の国に 人(ひと)多(さは)に 満ちてあれども 藤波(ふぢなみ)の 思ひ纏(まつ)はり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋(こ)ひや明かさむ 長きこの夜(よ)を

3249
敷島(しきしま)の大和の国に人(ひと)二人(ふたり)ありとし思はば何か嘆かむ

 

要旨 >>>

〈3248〉この大和の国に、こんなに多くの人があふれているのに、藤のつるがからまるように心がまつわりつき、萌え出した若草に対するように忘れられないあの人に、逢いたい逢いたいと思いつつ明かすのでしょうか、こんなに長い夜を。

〈3249〉大和の国にあの人がもしも二人いると思うことができるなら、どうしてこんなに嘆くことがあるだろう。

 

鑑賞 >>>

 恋の苦しさを歌った女の歌。3248の「敷島の」は「大和」の枕詞。「藤波の」は「思ひ纏はり」の枕詞。「思ひ纏はり」は、心が纏わりついて離れない。「若草の」は「思ひつきにし」の枕詞。「思ひつきにし」は、思いが寄りついてしまった。「人多に満ちてあれ」の中から一つ(ただ一人の君)をあげるのは、伝統的な「物ぼめ」の型です。3249の「何か嘆かむ」は、何でこのように嘆こうか。