訓読 >>>
家風(いへかぜ)は日に日に吹けど我妹子(わぎもこ)が家言(いへごと)持ちて来(く)る人もなし
要旨 >>>
家のほうからの風は日ごとに吹いてくるのに、妻からの家の便りを持ってきてくれる人とてない。
鑑賞 >>>
上総国の防人、朝夷郡(あさひなのこおり)の上丁丸子連大歳(まるこのむらじおおとし)の歌。「家風」は、気象学的な風の名ではなくふるさとの家の方角から吹いてくる風。「家言」は、家からのことづて。
窪田空穂は、「風、雲、鳥などは、音信を連想させるものになっていた。『家風は日に日に』は、家のことが絶えず連想される意で、『人もなし』は、その連想の裏切られる嘆きである。事としては常識的であるが、扱い方は相応に知性的で、防人の歌としてはふさわしくない感のあるものである。原型となる歌があったか、あるいは知識人である部領使の加筆があったかと思わせるものである」と述べています。
巻第20「防人歌」の構成
兵部少輔の大伴家持に上進された防人たちの歌は、全部で166首ありましたが、「拙劣歌は取り載せず」として82首が省かれました。巻第20の防人歌の構成と国別内訳は下記のとおりです。
遠江国の防人の歌
4321~4327・・・進上18首のうち7首
相模国の防人の歌
4328~4330・・・進上8首のうち3首
大伴家持の歌
4331~4336
駿河国の防人の歌
4337~4346・・・進上20首のうち10首
上総国の防人の歌
4347~4359・・・進上19首のうち13首
常陸国の防人の歌
4363~4372・・・進上17首のうち10首
下野国の防人の歌
4373~4383・・・進上18首のうち11首
下総国の防人の歌
4384~4394・・・進上22首のうち11首
大伴家持の歌
4398~4400
信濃国の防人の歌
4401~4403・・・進上12首のうち3首
上野国の防人の歌
4404~4407・・・進上12首のうち4首
大伴家持の歌
4408~4412
武蔵国の防人の歌
4413~4424・・・進上20首のうち12首
昔年の防人の歌
4425~4432
昔年に交替した防人の歌
4436