大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(19)・・・巻第20-4426~4428

訓読 >>>

4426
天地(あめつし)の神に幣(ぬさ)置き斎(いは)ひつついませ我(わ)が背(せ)な我(あ)れをし思はば

4427
家(いは)の妹(いも)ろ我を偲ふらし真結(まゆす)ひに結(ゆす)ひし紐(ひも)の解くらく思へば

4428
我が背(せ)なを筑紫(つくし)は遣(や)りて愛(うつくし)しみえひは解かななあやにかも寝(ね)む

 

要旨 >>>

〈4426〉天地の神々にお供え物をして、お祈りしながらいらっしゃい、あなた。私のことを思って下さるならば。

〈4427〉家にいる妻は私のことをしきりに偲んでいるらしい、しっかり結んだ着物の紐が解けてくるのを思うと。

〈4428〉うちの人を筑紫へ遣って、いとしいので、帯を解かずに悩ましく寝ることになるのでしょうか。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「昔年の防人の歌」とある8首のうちの1首で、天平勝宝7年に大伴家持が収集したものより以前に作られていた防人歌です。磐余諸君(いわれのもろきみ)という官人によって写され、家持に贈られたとされます。

 4426の「天地(あめつし)」は「あめつち」の方言。「幣」は、神に祈るときに捧げるもの。4427の「家(いは)」は「いへ」の方言。「妹ろ」の「ろ」は接尾語。「真結ひ」は、固く結び。4428の「えひ」は「おび」の方言。「解かなな」の「なな」は、ないで。「あやに」は、何とも言いようがなく。