大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(9)・・・巻第14-3537

訓読 >>>

柵越(くへご)しに麦(むぎ)食(は)む小馬(こうま)のはつはつに相見(あひみ)し児(こ)らしあやに愛(かな)しも

(或本の歌に曰はく)
馬柵(うませ)越し麦(むぎ)食)は)む駒(こま)のはつはつに新肌(にひはだ)触れし児(こ)ろし愛(かな)しも

 

要旨 >>>

柵越しにほんの少し麦を盗み食いする仔馬のように、わずかに関係した女だが、やたらに愛しくてならない。

(或る本の歌に曰く)
馬柵越しにほんの少し麦を盗み食いする馬のように、わずかに新肌に触れた女だが、やたらに愛しくてならない。

 

鑑賞 >>>

 上2句は「はつはつに」を導く序詞。「柵」は牛や馬などが入らないようにした柵。「小馬」は男性の比喩。「はつはつに」はほんのわずかにの意。「相見る」は男女が関係を結ぶこと。「児ら」は女の愛称。「し」は強意の助詞。「あやに」は、やたらに、何とも言いようがなく。「新肌」は初めて男に許す肌。いずれの歌も男の歌であり、ほんのちょっと関係した女が愛おしくてならない、と言っていますが、ほんのちょっとだからよかったということもあります。