大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

桧隈川に馬留め・・・巻第12-3907

訓読 >>>

さ桧隈(ひのくま)桧隈川(ひのくまかは)に馬(うま)留(とど)め馬に水(みづ)飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)に見む

 

要旨 >>>

桧隈を流れる桧隈川のほとりに馬をとめて、馬に水をお与え下さい。私はよそながらあなたのお姿を眺めましょう。

 

鑑賞 >>>

 「さ桧隈」の「さ」は接頭語で、「桧隈川」の位置を示すとともに、重ねて語調を整える修辞。「桧隈」は奈良県明日香村檜前。「桧隈川」は奈良県高市郡を通って曾我川に合流する川。村に住む女性が、思いを寄せる男または通りすがりの旅人に声をかけた歌、はたまた、朝の別れに名残りを惜しんで、しばらくでも長く夫を見ようとしていっている歌とされます。

 なお、当時この歌は人気があったらしく、『古今集』にある「ささのくま檜の隈川に駒とめてしばし水かへ影をだに見む」は、この歌が流伝されたものといいます。