訓読 >>>
秋風(あきかぜ)の千江(ちえ)の浦廻(うらみ)の木積(こつみ)なす心は寄りぬ後(のち)は知らねど
要旨 >>>
秋風が吹いて木の屑が千江の浜辺に打ち寄せられるように、私の心はあなたに寄せられました。行く末を知ることはできないけれど。
鑑賞 >>>
男の誘いのままに靡いた女の心をうたっています。将来がどうなっていくのか不安に思うものの、現在の男との関係に満ち足りています。一方では、恋に落ちた自分のことを客観的に見つめているようなところがあります。複雑な乙女心といったらいいのでしょうか。「千江の浦廻」は、石見とも近江ともいわれますが、所在未詳です。「木積なす」は、木の屑のように。この比喩は独特です。