大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

梅の花夢に語らく・・・巻第5-852

訓読 >>>

梅の花(はな)夢(いめ)に語らくみやびたる花と我思(あれも)ふ酒に浮かべこそ

 

要旨 >>>

梅の花が、夢の中で私に語ったことには、私は自分を風雅な花だと自負してます、どうか私にふさわしく、酒杯に浮かべてください、と。

 

鑑賞 >>>

 大宰府で詠まれた「梅花の歌」32首のあとに「後に追和した」歌として載っている歌です。作者名は記されていませんが、大伴旅人山上憶良、あるいは坂上郎女ともいわれます。梅花に仙女を連想する神仙趣味は、まさに旅人のようであります。「語らく」は、語ることには。「みやびたる」は、風雅な、高雅な。「こそ」は、願望の助詞。

 

筑紫歌壇

 大伴旅人、小野老、山上憶良、沙弥満誓、大伴四綱、大伴坂上郎女など、錚々たる万葉歌人が、当時の筑紫に都から赴任していました。大宰帥大伴旅人邸には、これらの歌人が集い、あたかも中央の文壇がこぞって筑紫に移動したような、華やかなサロンを形成していたようです。

 725年、山上憶良筑前守に就任、次いで727年に大伴旅人が太宰帥に就任。この頃から730年10月に旅人が大納言に昇進して12月頃に太宰府を離れるまでが、九州筑紫の地に万葉文化が花開いた時期でした。