大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

彦星と織女と今夜逢ふ・・・巻第10-2039~2041

訓読 >>>

2039
恋しけく日(け)長きものを逢ふべくある宵(よひ)だに君が来まさずあるらむ

2040
彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)と今夜逢ふ天の川門(かはと)に波立つなゆめ

2041
秋風の吹きただよはす白雲(しらくも)は織女(たなばたつめ)の天(あま)つ領巾(ひれ)かも

 

要旨 >>>

〈2039〉恋しく思う日々は長かったのに、お逢いできるはずの今宵さえ、どうしてあの人はおいでにならないのだろうか。

〈2040〉彦星と織女星とが今夜逢う、天の川の渡りに、波よ決して立たないで。

〈2041〉秋風が吹き漂わせている白雲は、織女の領巾ではないでしょうか。

 

鑑賞 >>>

 七夕の歌。2040の「川門」は、川の流れが門のように狭くなっている所。2041の「領巾」は、女性が肩にかける長いショールのような布。白雲をそれに見立てています。

 

七夕歌について 

 中国に生まれた「七夕伝説」が、いつごろ日本に伝来したかは不明ですが、上代の人々の心を強くとらえたらしく、『万葉集』に「七夕」と題する歌が133首収められています。それらを挙げると次のようになります。

巻第8
山上憶良 12首(1518~1529)
湯原王 2首(1544~1545)
市原王 1首(1546)

巻第9
間人宿祢 1首(1686)
藤原房前 2首(1764~1756)

巻第10
人麻呂歌集 38首(1996~2033)
作者未詳 60首(2034~2093)

巻第15
柿本人麻呂 1首(3611)
遣新羅使人 3首(3656~3658)

巻第17
大伴家持 1首(3900)
巻第18
大伴家持 3首
 (4125~4127)

巻第19
大伴家持 1首(4163)

巻第20
大伴家持 8首(4306~4313)