大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

大伴家持と紀女郎の歌(2)・・・巻第4-769

訓読 >>>

ひさかたの雨の降る日をただひとり山辺(やまへ)に居(を)ればいぶせかりけり

 

要旨 >>>

雨が降る中、あなたのいない山裾でひとり過ごしていると、何とも心が晴れません。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持紀女郎に答えて贈った歌とありますが、紀女郎から贈られた歌は載っていません。家持は、いまだ整わない新都の恭仁京にいて、奈良にいた女郎に贈った歌のようです。「ひさかたの」は「雨」の枕詞。「山辺」は、恭仁京における家持の宅があった場所ですが、どの山かは不明です。「いぶせかりけり」は、心が晴れない、うっとうしいことだ。

 斎藤茂吉は、この歌について「もっと上代の歌のように、蒼古(そうこ)というわけには行かぬが、歌調が伸々のびのびとして極めて順直なものである。家持の歌の優れた一面を代表する一つであろうか」と評しています。