大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

あしひきの山道も知らず・・・巻第10-2315

訓読 >>>

あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿(しらかし)の枝もとををに雪の降れれば 

 

要旨 >>>

どこが山道なのか分からない。白橿の枝がたわむほどに雪が降り積もったので。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から「冬の雑歌」1首です。「あしひきの」は「山」の枕詞。「とををに」は、たわみしなうほどに、の意。なお、左注には、「或本には三方沙弥(みかたのさみ)が作といふ」とあります。

 窪田空穂はこの歌について、「清らかな拡がりをもった境が、調べに導かれて、ただちに気分となって浮かんで来る歌である。気分本位の詠風となった奈良朝時代の先縦をなしているとみえる歌であるが、それとは異なった趣がある。奈良朝時代には、気分によって材を捉えているのであるが、人麻呂は取材を通して気分にまで到らせているのである。実際に即し、それを単純に捉え、調べによって気分として行く態度を、この歌は明らかに示している」