大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

大丈夫のさつ矢手挟み・・・巻第1-61

訓読 >>>

大丈夫(ますらを)のさつ矢(や)手挟(たばさ)み立ち向ひ射(い)る圓方(まとかた)は見るにさやけし

 

要旨 >>>

ますらおが、矢を手挟んで立ち向かい射貫く的、その名の圓方の浜は見るからに清々しい。

 

鑑賞 >>>

 舎人娘子(とねりのおとめ)の歌。大宝2年(702年)の持統天皇三河行幸に従駕したときの作であり、この歌から、舎人娘子持統天皇に仕えた宮女だったのではないかともいわれます。「大丈夫の~射る」は「圓方」を導く序詞。「圓方」は「的」の意味で続き、地名の「圓方(三重県松坂市)」の「圓」に転じています。「さつ矢」は、神の加護がある幸多き矢の意で、矢のほめ言葉。

 土地を讃える歌の場合、その土地を修飾する枕詞、あるいは序詞を用い、さらにその土地の愛でたさを言い添えるのが型になっています。ここでも3句以上の長い序詞を用いて「圓方」を言い、讃える語も添えられています。