大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

大口の真神の原に降る雪は・・・巻第8-1636

訓読 >>>

大口(おほくち)の真神(まがみ)の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに

 

要旨 >>>

真神の原に降っている雪よ、そんなにひどく降らないでほしい。ここに我が家はないのだから。

 

鑑賞 >>>

 舎人娘子(とねりのおとめ)の歌。舎人娘子は伝未詳ながら、皇子の傅(ふ)だった舎人氏の娘ではないかともいわれます。舎人氏は帰化人の末とされます。

 「大口の」は、口が大きい意で、狼を真神と称したところから「真神」の枕詞。「真神の原」は、明日香村にある飛鳥寺の南方の原。「いたくな降りそ」の「いたく」は、ひどく、「な~そ」は、禁止。人家のない真神の原を通っていて、折から降ってきた雪に呼びかけているとみられ、立ち往生している様子が目に浮かびます。率直な歌ですが、あるいは誰かに贈った歌ではないかともいわれ、もしそれだと、いったい何を意味しているのでしょう。