大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

朝月の日向黄楊櫛・・・巻第11-2500

訓読 >>>

朝月(あさづき)の日向(ひむか)黄楊櫛(つげくし)古(ふ)りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ

 

要旨 >>>

朝の月が日に向かうという、日向産の使い古した黄楊櫛(つげぐし)のように、私たちの仲もずいぶん古くなってしまいましたが、どうしてあなたはいくら見ても見飽きないのでしょう。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」。上2句は「古りぬれど」を導く序詞。「朝月の」は「日向」の枕詞。「日向」は、国名で今の宮崎県。「何しか」は、どういわけか。夫婦関係が久しくなっている妻が、朝、黄楊の櫛を扱いながら、夫に対して和んで言っている歌です。梳っているのは自分の髪ではなく、夫の寝乱れた髪でしょうか。微笑ましい歌です。