大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

山守のありける知らに・・・巻第3-401~402

訓読 >>>

401
山守(やまもり)のありける知らにその山に標(しめ)結(ゆ)ひ立てて結ひの恥(はぢ)しつ

402
山守(やまもり)はけだしありとも我妹子(わぎもこ)が結(ゆ)ひけむ標(しめ)を人解(と)かめやも

 

要旨 >>>

〈401〉すでに山を管理する山番がいたとも知らず、その山にしめ縄を張るなんて、私はすっかり恥をかきました。

〈402〉山番がもしいたとしても、あなたが張ったしめ縄なら、それを解く人は決していないでしょう。

 

鑑賞 >>>

 401が大伴坂上郎女、402が大伴駿河麻呂の歌。いずれも親族と宴会をした日に作った歌で、401では、郎女が二女の坂上二嬢と結婚させようとしていた駿河麻呂に対し、すでに女がいるのではないかと、暗にうかがったものとされます。「山守」は、山を守る人のことで、本来は女の夫に喩えますが、ここでは駿河麻呂を女に見立てて戯れに歌いかけています。

 これに対して駿河麻呂が直ちに答えたのが402で、郎女に逆らう人などいないと、わざと恐縮してみせています。「けだし」は、もし。ただ、これらの歌には違った解釈もあり、401は「娘の二嬢とあなたが既に誓い合った仲である(山に山守がある)のを知らずに、娘を守ろう(標結ひ立てて)としたのは、全く恥ずかしいことでした」と、娘をよろしくと駿河麻呂に言っており、402は「母親の正式な許し(結んだ標を解く)がなければ、いくら山守であってもどうしようもない」と答えて喜んでいるとするものです。