訓読 >>>
はなはだも夜更(よふ)けてな行き道の辺(へ)のゆ笹(ささ)の上に霜(しも)の降る夜(よ)を
要旨 >>>
こんなにも夜が更けてから帰らないでください。道端の笹に霜が降りてくる寒い夜なのに。
鑑賞 >>>
「通い婚」の時代にあって、女が男の帰るのを惜しんで、なるべく引き留めようとする歌はかなり多くあります。この歌について斎藤茂吉は、万葉の歌はこのように実質的、具体的だからいいので、後世の「きぬぎぬのわかれ」的に抽象化してはおもしろくない、と言っています。
「はなはだも」は非常に、とても、の意。「な行き」の「な」は禁止を意味する語、「ゆ笹」の「ゆ」は接頭語です。