大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

このころの我が恋力・・・巻第16-3858~3859

訓読 >>>

3858
このころの我(あ)が恋力(こひぢから)記(しる)し集め功(くう)に申(まを)さば五位の冠(かがふり)

3859
このころの我(あ)が恋力(こひぢから)給(たま)らずは京兆(みさとづかさ)に出(い)でて訴(うれ)へむ

 

要旨 >>>

〈3858〉近ごろ、私が恋に費やしている労力を記録して集め、功績に換算して願い出たら、五位の冠に匹敵するだろう。

〈3859〉このところの恋に費やした私の労力にごほうびを頂けないなら、京の役所に行って訴え出てやる。

 

鑑賞 >>>

 恋の苦しさを、労役や位階昇進にたとえ、自身を滑稽に歌っている男の歌です。3858の「恋力」は恋に要した苦労。「功」は功績。「申さば」は上申したならば。当時の官人の人事制度では、考課令に、官人は自らの行跡の功過を記録して上申することと定められていました。「五位」は宮中の位階で、五位以上が貴族とされ、庶民や下級官人からみれば雲の上の存在でした。

 3859の「給らずば」は、里に住んでいる者に対し、里長がくれる賞のことを言っています。「京兆」は、本来は都の警察・司法・行政を司る役所のことで、右京と左京に分かれ、左右2人の長官がいました。ただし官人の人事は管轄外でしたから、ここでは広く都の役所の意味で言っているようです。