大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

山ながらかくも現しく・・・巻第13-3332

訓読 >>>

高山(たかやま)と 海とこそば 山ながら かくも現(うつ)しく 海ながら しか真(まこと)ならめ 人は花物(はなもの)そ うつせみ世人(よひと)

 

要旨 >>>

高い山と海こそは、山であるがゆえに確かに存在し、海であるがゆえにはっきりと存在しているのだろう。しかし、人は花のようにはかなく散る、いっときの世の人。

 

鑑賞 >>>

 人の世の無常を、確かな現実として存在し続ける山や海と対比してうたっています。はかなく散る「花」は桜でしょうか。仏典の影響を強く受けている歌です。

 「山ながら」は、山であるがゆえに、山の本性として。「かくも現しく」は、このように確かに存在し。「しか真ならめ」は、そのように真実なのだろう、いかにも海らしくある意。「うつせみの」は「世」の枕詞。

 

歌の形式

片歌
5・7・7の3句定型の歌謡。記紀に見られ、奈良時代から雅楽寮・大歌所において、曲節をつけて歌われた。

旋頭歌
 5・7・7、5・7・7の6句定型の和歌。もと片歌形式の唱和による問答体から起こり、第3句と第6句がほぼ同句の繰り返しで、口誦性に富む。記紀万葉集に見られ、万葉後期には衰退した。

長歌
 5・7音を3回以上繰り返し、さらに7音の1句を加えて結ぶ長歌形式の和歌。奇数句形式で、ふつうこれに反歌として短歌形式の歌が1首以上添えられているのが完備した形。記紀歌謡にも見られるが、真に完成したのは万葉集においてであり、前期に最も栄えた。 

短歌
 5・7・5・7・7の5句定型の和歌。万葉集後期以降、和歌の中心的歌体となる。

仏足石歌体
 5・7・5・7・7・7の6句形式の和歌。万葉集には1首のみ。