大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

山ながらかくも現しく・・・巻第13-3332

訓読 >>>

高山(たかやま)と 海とこそば 山ながら かくも現(うつ)しく 海ながら しか真(まこと)ならめ 人は花物(はなもの)そ うつせみ世人(よひと)

 

要旨 >>>

高い山と海こそは、山であるがゆえに確かに存在し、海であるがゆえにはっきりと存在しているのだろう。しかし、人は花のようにはかなく散る、いっときの世の人。

 

鑑賞 >>>

 人の世の無常を、確かな現実として存在し続ける山や海と対比してうたっています。はかなく散る「花」は桜でしょうか。仏典の影響を強く受けている歌です。

 「山ながら」は、山であるがゆえに、山の本性として。「かくも現しく」は、このように確かに存在し。「しか真ならめ」は、そのように真実なのだろう、いかにも海らしくある意。「うつせみの」は「世」の枕詞。