訓読 >>>
をちこちの礒(いそ)の中なる白玉(しらたま)を人に知らえず見むよしもがも
要旨 >>>
あちこちの海辺の石の中にひそむ美しい玉(真珠)を、どうかして他人に知られず見ることができないだろうか。
鑑賞 >>>
『柿本人麻呂歌集』から「玉に寄せる」歌。「白玉(真珠)」は、尊く美しい女、「をちこちの磯」は、その白玉を厳しく取り巻いて護っている人々を意味しており、作者は近づきがたい高い身分の女に恋しています。そうした女性はずっと家の中にいたため、男は垣間見(かいまみ)、ありていに言えば「のぞき見」するよりほかなかったのです。それにしても「をちこちの」と言っていますから、ひょっとしたら「のぞき趣味」の男が詠んだ歌かもしれません。「もがも」は願望。