大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

をちこちの礒の中なる・・・巻第7-1300

訓読 >>>

をちこちの礒(いそ)の中なる白玉(しらたま)を人に知らえず見むよしもがも

 

要旨 >>>

あちこちの海辺の石の中にひそむ美しい玉(真珠)を、どうかして他人に知られず見ることができないだろうか。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から「玉に寄せる」歌。「白玉(真珠)」は、尊く美しい女、「をちこちの磯」は、その白玉を厳しく取り巻いて護っている人々を意味しており、作者は近づきがたい高い身分の女に恋しています。そうした女性はずっと家の中にいたため、男は垣間見(かいまみ)、ありていに言えば「のぞき見」するよりほかなかったのです。それにしても「をちこちの」と言っていますから、ひょっとしたら「のぞき趣味」の男が詠んだ歌かもしれません。「もがも」は願望。