大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(16)・・・巻第14-3430

訓読 >>>

志太(しだ)の浦を朝(あさ)漕(こ)ぐ船は由(よし)なしに漕ぐらめかもよ由(よし)こさるらめ

 

要旨 >>>

志太の浦を朝早く漕いで行く舟は、わけもなくあんなに急いで漕いでいるのだろうか。そんな筈はない、きっとわけがあって漕いでいるに違いない。

 

鑑賞 >>>

 駿河の国(静岡県中部)の歌。「志太の浦」は、大井川の河口とされます。男が、朝早くから、何処へ行くともなく舟を漕ぎ回っているのは、そこに好きな女の家があるからで、その不自然な動きを見て、「由こさるらめ(きっとわけがあるのだろう)」と言ってからかっている歌です。用もないのに、好きな人のそばに行ってしまうのはよくあることですが、やり過ぎてストーカー行為と間違われないように注意しなくてはなりません。