大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

背の山に直に向へる妹の山・・・巻第7-1193

訓読 >>>

背(せ)の山に直(ただ)に向(むか)へる妹(いも)の山(やま)事(こと)許せやも打橋(うちはし)渡す

 

要旨 >>>

背の山に向かい立つ妹の山は、背の山の求婚を承諾したのだろうか。隔てる川に打橋が渡してある。

 

鑑賞 >>>

 「背の山」は、和歌山県伊都郡かつらぎ町の西端にあり、大化の改新の詔によって畿内国の南限と定められた山です。「妹の山」は、古くは名のない山で、紀の川の南岸の「背山」に向き合う山として名付けられたといいます。この「背の山」または「妹の山」は『万葉集』に15首も詠まれており、当時の旅人は、紀伊の国の睦まじい2つの山を見て郷愁に駆られたようです。

 「直に向へる」は、直接に向かい合っている。「事許す」は、求婚を承諾する意。「打橋」は、その中間にある、紀の川川中島である船岡山のこと、あるいは、板を架け渡しただけの仮の橋と解するものもあります。