訓読 >>>
卯(う)の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思(かたもひ)にして
要旨 >>>
卯の花の咲くようには、心を開いてくれないあの人に、ずっと恋い続けるなのだろうか、片思いのままで。
鑑賞 >>>
片思いをしている男の歌で、花に寄せて詠んでいます。「咲くとはなしにある人」は、恋の実らない相手。窪田空穂は、いかにもかすかな言い方で、しかし心の明らかなもので、巧みである、と評しています。「恋ひや渡らむ」の「や」は、疑問の係り。
花が「卯の花」と呼ばれるウツギは、日本と中国に分布するアジサイ科の落葉低木です。 花が旧暦の4月「卯月」に咲くのでその名が付いたと言われる一方、卯の花が咲く季節だから旧暦の4月を卯月と言うようになったとする説もあり、どちらが本当か分かりません。ウツギは漢字で「空木」と書き、茎が中空なのでこの字が当てられています。