大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我が恋ひ死なば誰が名ならむも・・・巻第12-3105~3106

訓読 >>>

3105
人目(ひとめ)多み直(ただ)に逢はずてけだしくも我(あ)が恋ひ死なば誰(た)が名ならむも

3106
相(あひ)見まく欲しきがためは君よりも我(わ)れぞまさりていふかしみする

 

要旨 >>>

〈3105〉人目が多いからといってじかに逢ってくれないで、もしも私が恋死にでもしたら、いったい誰の評判になるだろうか、だれでもない、あなたの評判になるだろうよ。

〈3106〉お逢いしたいと願う気持ちは、あなたより私の方がまさっているのに、どうしておいでにならないのか、変に思っています。

 

鑑賞 >>>

 3105は、逢いに行きたいのに逢えないのは、あなたのせいだと威嚇するふりをして言い訳する男の歌。「けだしくも」は、もしかして、万一。「誰が名ならむも」は、誰の評判になろうか、誰でもないあなたの評判になろう。3106は、それはおかしいと女がやり返した歌。「いふかし」は、心が晴れない、不審に思う。